昭和二十五年十月に創刊された【近世庶民文化】は軟派系の個人発行誌として戦後真っ先に登場し、終刊号である百号、及び百号付録を昭和四十二年三月に出すまで実に十八年の長きに亘って刊行を継続した希有な雑誌である。 軟派を扱ってはいても過激になりすぎず、誌名が現すように、江戸文芸を真摯に、ある意味硬すぎるぐらい硬く追求する面も持ち合わせていた。 疑問の提起、その回答或いは解釈、それに対する反論、といった具合に、号を追って進行するような誌面構成は、研究誌としての面目躍如である。
本誌は主宰者である岡田甫の専門であった古川柳、特に末摘花の解釈を中心に、古川柳全般、戯作、読みを主とした江戸艶本の復刻、紹介、解説、研究、活字化等を主な内容としている。 会員制の軟派雑誌が摘発を受けて軒並み潰れていく中、一度も災難に遭うこと無く(岡田甫個人は何度か呼出しを受けている)、天寿を全うしている。 発行は当初オランダ書房内の近世庶民文化研究会であったが、後に近世庶民文化研究会として独立、さらに近世庶民文化研究所と改称して終刊に至る。
本誌の発行のみならず、会報である「瓦版」(ガリ版で数頁程度)の頒布、記念大会の催し等、時々に応じた企画を行うことで会を維持して行った。 また、硬くとは言っても元々軟派から出発していることに間違いは無く、他の会で頒布された資料や書籍の取次を行っている他、 初期の頃には自ら特別会員を募って、当時としては絶対に公刊出来ない資料(主に江戸艶本の絵の部分)等を頒布したりもしている。
冊数が多いので、何回かに分けて更新の予定。先ずは創刊号から九号までをアップ。気長にお待ちを乞う。
近世庶民文化(全百冊) | |
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判型 | A5判 |
編集 | 岡田甫 |
発行 | 岡田甫 |
発行所 | 近世庶民文化研究会、後に近世庶民文化研究所 |
刊年 | 昭和二十五年十月三十日 〜 昭和四十二年三月二十五日 |
【江戸紫】は【近世庶民文化】の後続誌として昭和四十三年六月に創刊された。表紙、本文共に和紙を使用したアンカットのB6判、小型の小冊子であるが、【近世庶民文化】以上に趣味誌としての雰囲気満点である。復刻はほとんどが写真凸版、解説にも図版を多用、各種資料を貼り込むなど、世の中全体が高度成長期の始まりから真っ只中にあり、その余裕が雑誌作りにも及んでいたのかも知れない。
会報は「瓦版」から「紫のゆかり」と題したものに変ったが、体裁は「瓦版」と同様である。
江戸紫(全二十一冊) | ||
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判型 | B6判 | |
編集 | 岡田甫 | |
発行 | 岡田甫 | |
発行所 | 近世庶民文化研究所 | |
刊年 | 昭和四十三年六月六日 〜 昭和四十八年六月三日 |
近世庶民文化
江戸紫