閑話究題 XX文学の館 珍書屋 戦後の研究会
近世庶民文化研究所
雑誌【近世庶民文化】はこの種の会員制特殊雑誌の先陣を切って、昭和二十五年十月に創刊号が発行されました。
川柳「末摘花」研究の第一人者であった岡田甫が主宰した近世庶民文化研究会(後に近世庶民文化研究所に改称)からの刊行でした。
出発点が「末摘花」ですから掲載内容が軟らかいのは当然ですが、川柳を初めとした江戸軟文学を主題とする文献重視の編集方針であったため、一方では相当な堅さも備えていました。
【近世庶民文化】が百号(昭和四十二年三月)まで続いたのも、過激に成りすぎず、軟らかい中にも堅実な運営を行った賜物だと思われます。
地下本の世界で【近世庶民文化】があまり詳しく取り上げられることの無いのは、その様な理由によるものと思われます。
しかし、実際には様子が少し異なります。
近世庶民文化研究会には特別会員の制度があり、この特別会員用に頒布された資料類は、当時は絶対に表に出せないものでした。
江戸艶本の図版を中心とした構成ですが、写真凸版による復刻や、写真そのものの資料もあります。
同じ物を作ってもしょうがないと言うことで、他の会で頒布したものを取り次いで間に合わせる事もありました。
現在それらを正確に記した資料が存在しませんので、断片的ではありますが、判明してる範囲の一覧を掲げます。
資料番号 | 資料名 | 備考 |
1 | 江戸時代の謎々 | 資料名は「新板なぞづくし」、掲題は扉の題名 |
2 | 去垢集 写真を含む本(発禁になっているらしいが何かは不明) | ¥250(〒共) |
3 | 東海道五十三次 膝寿里日記 | 124×173、29丁、写真凸版 |
4 | 眞似鉄炮 | B6判、16頁、総アート紙、写真版、挿画10図、本文二面、¥200 |
5 | 遺精先生夢枕 | 写本よりの活字化、¥400 |
6 | 小柴垣草紙、女護島漂流絵巻 | 各14図、特アート百斤、各¥200 |
7 | 稚児草紙 2図 山路露 6図 野郎絹ぶるい 4図 勘麁軍談 1図16頁 | 特アート百斤、¥200 |
8 | 和漢名女書挿画 | 写真凸版、(¥200要注) |
臨時版 | バイロス画集 | 特アート片面12葉(生活文化の『アレチノ本挿畫集』と同じもの(?))、¥300 |
9 | 會本笑上戸挿画 | 28図、コロタイプ、¥500 |
10 | 頑索考(手淫通)13話 | 厚手和洋、A5変形枡型、32頁五号活字、¥200 |
A | 色道禁秘妙 | ¥300(頒布中止) |
B | 下田了仙寺秘佛写真集 | 十二葉、¥300 |
C | 大東閨語 乾 | ¥500(庶文の発行ではない) |
D | 大東閨語 坤 | ¥700 |
E | 色道禁秘妙 上 | 35丁、写真凸版、洋紙¥300、和紙¥500 |
F | 色道禁秘妙 下 | 36丁 |
G | 春臠柝甲 | 写真凸版、16面、和装、¥200 |
H | 好色四季咄 | 12図16頁、アート紙、¥200 |
I | 詳細不明 |
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J | 同 |
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K | 同 |
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L | 同 |
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M | 遺精先生夢枕 | 写真16葉20頁、¥300 |
甲 | 浪千鳥 | 袋入、¥500(実際に頒布されたかどうかは不明) |
その他の頒布資料 |
江の島弁天 | 5葉(キャビネ判写真)、¥300 |
豆談語 | 110×144、44丁、写真凸版 |
【近世庶民文化】と【江戸紫】の総目次が「近世庶民文化」と「江戸紫」にありますので、参照して下さい。
表紙違いのものもあり、書名も無く、表紙は初めから無かったのかもしれません。