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閑話究題 XX文学の館 秘本縁起 山路閑古の秘本

中・短編・復刻版


中・短編

「茨の垣」「僧房夢」は色々な解題に登場するので比較的良く知られている方であるが、 中・短編に関してはその実体が殆ど知られていない。 太平書屋刊行の秘作選集の解題でも、短編に就いては稿を改めてとしているが、実現はしていない。当館で出自まで確認できたのは、以下の「アンゴラ兎」のみである。

歓呼十種表紙
122×17638頁
昭和25年7月
アンゴラ兎
夜の秋
(美和書院版)
A5判横綴52頁
昭和30年10月

【歓呼十種】と題する小冊子がある。 この小冊子に『口上』と題する巻頭言があり、『歓呼十種』命名の謂れが述べられている。 「戰後、余は新しい浪漫主義の立場から「散歩文学十種」と題する十個の短編小説を作り、これを諸雑誌によって發表した。 …略…さてその次の計画は、更に一段と趣向を加へた短編十種で、これを閑古十種と呼稱する。 こゝに於いて漸く大衆の興味を離れ、特殊の好事家ならでは、その趣味を鑑賞し難いと思はれる。 よってこの分は活字印刷とはせず、余自ら鉄筆を動かし、原稿のまゝをガリ版に附して、所謂好事家版として趣味家の間に頒つことゝした。 …略…冊子の題名は、閑古十種に通ずる「歓呼十種」とした。」

『歓呼十種』『アンゴラ兎』を出した後長い間中断しており、続編の予告も行ったが、結局この一編が上梓されたのみで、未完に終わっている。

尚、『アンゴラ兎』美和書院刊行の丹頂版「話をきく娘」『夜の秋』の題名で併載されている。伏字部分以外にも一部手直しがされているのは、氏のいつものパターンである。


山路閑古秘作選集(太平書屋)

太平書屋が秘作選集として閑古氏の秘作シリーズを刊行した際、戦前の発表作品及び稿本のままであったものも復刻している。 これらは自らの手に成る「賢愚經」の解題に作品名が列挙されているので、 この解題を見た人は知っていたであろうが(それでもごく僅かな人のみである)、従来全くその存在を知られていなかったものである。 その意味でも、この秘作選集の刊行は快挙と言って良いであろう。

尚、これらの作品に就いての知識、資料は皆無であるので、説明の部分は秘作選集の解題に全面的に依存している。

西行雨夜月
B6判横綴55頁
昭和61年7月
限定150部

孔版の個人雑誌【春信】三十号(昭和6年11月)に掲載されたものである。 「にしへゆくあまよのつき」と読ませるそうである。 【春信】は二十数部しか発行されておらず、原本は未見である。

この作品は全十二回より成る小説の第六回にあたると言うことであるが、真偽は不明である(おそらく仮託であろう)。


源さんの話
B6判横綴113頁
昭和61年7月
限定150部

孔版の個人雑誌【春信】三十ニ号(昭和7年9月)に掲載されたものである。 原題は「五つのルーデサック」と言うそうだが、これも真偽は不明である(これも仮託と思われる)。

「西行雨夜月」と同時に頒布されたので、刊行は昭和61年7月、150部限定も同様である。


秋来抄
113×15935丁
昭和62年12月
限定150部

昭和十一年八月に完成した、自作自筆自装の稿本である。稿本であるが故に原本は一冊しか存在しない。 巻首と巻尾にそれぞれ女性の正面と背面からの自作の図が配してあるのも稿本ならではであろうか。


殘花歸花
125×170248頁
昭和63年7月
限定150部

昭和十三年頃の作品である。「のこんのさくらかえりばな」とルビが振ってあるのでそのように読ませるのであろう。 この作品も稿本であるが、原寸通りの影印で復刻されているので、原本の趣きが見て取れる。


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