1.資料一覧
「高資料」何と魅惑的な響きを持った言葉であろう。初めて日の目を見てから(地下本に日の目を見るというのもおかしいが)既に三十年以上の年月が経ち、今尚新たな発表があるにも拘わらず、判然としないその実態に魅力を感じるのは迂生だけであろうか。性記録文献資料は知られているだけでも数多いが、「相対会研究報告」、「生心リポート」、「高資料」の三点が質量共に他を圧倒していると言われている。それにも拘わらず、その実態は必ずしも明らかではない。この種の資料は、元来が公にする性質のものではない爲、内容の真偽、文献の出自など判然としないのが普通であるが、「相対会研究報告」、「生心リポート」に就いては、内容の真偽はともかく、出自は明らかであり、問題点を抱えながらも研究は進んでいる。しかし、「高資料」、に限っては内容の真偽は勿論、その出自すら明らかになっていない。出自に就いては発表の度に明言されているので、一見明らかなようであるが、他の二点に較べあまりにも疑問点が多すぎる。その疑問点を解明する端緒となる「高資料」、の既発表分の資料をまとめてみた。
- 補足
- 平成十四年五月現在、既に半世紀近く経とうとしています。昔日の感は否めません。
生活文化
発行 | 生活文化資料研究会 |
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号数 | 資料名 | 資料提供者 | 発行日 |
10 | 輪姦願望の女 | 水野澄江 | 昭和29年 2月 1日 |
11 | 昭和29年 2月20日 |
12 | 窃視録 | 若林悦郎 | 昭和29年 3月25日 |
14 | 昭和29年 5月10日 |
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生活文化 高資料掲載号 | 10号『輪姦願望』 |
高資料文庫刊行案内
発行 | 生活文化資料研究会内高資料文庫刊行会 |
案内 | 昭和29年 4月 |
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巻数 | 資料名 | サブタイトル | 整理番号 |
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| 肉欲外道 |
| 84 | {風俗資料}1『閨鬼』 として刊行 |
一 | 蛤倶楽部 | 幼女・少女姦 | 27 | 未刊 |
附『少年嗜好』 | 112 |
二 | 夢魔記 | 麻酔薬 | 61 | 未刊 |
三 | 粘液を湛えた壷 | 姦通記録【一】 | 17 | 未刊 |
四 | 襯衣物語 | 姦通記録【二】 | 129 | 未刊 |
五 | 衂(ちぬら)れた草 | 強姦記録 | 179 | 未刊 |
六 | 鞭と縄と梯子 | 加虐(サジズム)淫楽記 | 70 | 未刊 |
七 | 妻に跪く | 被虐(マゾヒズム)淫楽記 | 71 | 未刊 |
八 | 性器玩弄 |
| 7 | 未刊 |
九 | 肉を賣る | 売春記録 | 203 | 未刊 |
十 | 春早譜 | 桃色遊戯 | 216 | 未刊 |
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刊行案内(複製) |
風俗資料
発行 | 風俗資料刊行会 |
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巻数 | 資料名 | 資料提出 | 発行日 |
1 | 閨鬼 | 八重洲英男 | 昭和29年12月(?) |
肉の奴隷達 | N・T |
2 | 強姦願望の女 | とき子 | 昭和29年 9月(?) |
性器嗜虐症 | S・E |
3 | 臍下極楽 | 朝倉逸男 | 昭和30年 3月(?) |
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風俗資料三巻 | 第三巻『臍下極楽』扉 |
- 補足
- 『性器嗜虐症』と『臍下極楽』は、各々その一部が【造化】(造化研究会)5号(昭和二十九年十二月)と8号(昭和三十年二月)に、予告の形で一部が掲載されています。
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えろちか
発行 | 三崎書房 |
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通巻 | 資料名 | 整理番号 | 発行日 |
12 | 一盗の論理 | 未記載 | 昭和45年 6月 1日 |
15 | 二婢の考察 | 22-2 | 昭和45年 9月 1日 |
18 | 此の小さな悪魔 | 112 | 昭和45年12月 1日 |
20 | 或副業の効果 | 126 | 昭和46年 2月 1日 |
22 | 「夜這い」の経験 | 33 | 昭和46年 4月 1日 |
25 | 山の湯宿の二人の女 | 22-3 | 昭和46年 7月 1日 |
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えろちか 22 一盗の理論 |
三崎版高資料
編集 | 高資料整理委員会 |
発行 | 三崎書房 |
発行日 | 昭和46年9月20日 |
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資料名 | 整理番号 |
少女教育の一つの試み | Y12 |
マコト会始末記 | 67 |
一盗の手段 | 22-1 |
二婢の実験 | 22-2 |
この小さな悪魔 | 112 |
ある副業の効果 | 126 |
「夜這い」の経験 | 33 |
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高資料(三崎書房) |
小説官能読切
発行 | サン出版 |
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号数 | 資料名 | 整理番号 |
昭和五十三年度 |
| 1 | 小さな悪魔 |
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? | ある少女姦 |
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10 | 淫魔の秘密 |
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11 | 制服の売春 |
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12 | 禁獣の部屋 |
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昭和五十四年度 |
| 1 | 肉魔の祭典 |
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2 | 人妻狩り |
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3 | 魔性のしたたり |
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4 | 売春夫人 |
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5 | 肉舎の虜 |
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6 | 少女狩り |
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7 | 淫ら囃子 |
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8 | 小さな色魔 |
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9 | 猟色の狩人 |
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10 | 盲執鬼 |
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11 | 姦通列車 |
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12 | 一盗二碑 |
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昭和五十五年度 |
| 1 | 淫蕩尼 |
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2 | 肉欲の季節 |
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3 | 猟色夫人 |
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4 | 女高生狩り |
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5 | 死美人犯し |
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6 | 色魔の棲む村 |
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7 | 肉欲のるつぼ |
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8 | 愛奴絶唱 |
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9 | 少女色地獄 |
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10 | 淫蕩行者 |
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11 | 兄といもうと |
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12 | 少女と娼婦と |
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昭和五十六年度 |
| 1 | 悦虐の花弁 |
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2 | 色魔の招待状 |
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3 | 猟色の部屋 |
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4 | 淫獣の貴婦人 |
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5 | 女子大生セックス研究会 |
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6 | 肉曼陀羅 |
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7 | 痴獄の未亡人 |
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8 | 淫魔堕地獄 |
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9 | 生贄夫人 |
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10 | ロリータ娼婦 |
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11 | 女臭漁り |
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昭和五十七年度 |
| 3 | 春情乱れ床 |
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昭和五十九年度 |
| 12 | 阿修羅の女 |
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昭和六十年度 |
| 1 | 悦虐パラダイス |
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2 | 愉しき小悪魔 |
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4 | 新宿淫蕩囃子 |
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5 | 獣姦奇譚 | 261 |
6 | 淫魔の棲む協会 | 223 |
7 | 無貞操家族 | 289 |
8 | 牡丹夫人の恋人 | 未記載 |
9 | 淫乱妻物語 |
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10 | スワップ倶楽部 | 233 |
12 | 無毛症の女 |
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昭和六十一年度 |
| 2 | マラ姉妹 | 271 |
4 | 麻酔淫行魔 | 67 |
6 | 性豪ボーイ | 212 |
8 | 浮気願望の妻 | 64 |
10 | 淫婦とロリータ | 299 |
12 | 愉しき貸し妻 | 214 |
昭和六十二年度 |
| 2 | 淫魔窟の人妻 | 119 |
4 | 性神・歓喜仏物語 | 26 |
6 | 秘本精液の匂い | 112 |
8 | 淫猥少女教育 | 201 |
10 | 不詳 |
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12 | 援助求めます | 301 |
昭和六十三年度 |
| 4 | 極楽ベッド戦争 | 172 |
6 | エロ怪童と名器妻 | 220 |
- 補足
- 著作権と肖像権の問題がありますので、雑誌の表紙書影他が掲げられません。ご了承下さい。
- 本稿執筆開始当時、月刊誌【小説官能読切】に「高資料」が連載されていることを知らず、次の{高資料叢書}が第三期の始まりのように考えていましたが、実際には【小説官能読切】での連載が、第三期の開始時期です。保存され難い雑誌ということもあり、当時手に入った数冊以外は全容が分かりませんでした。その後、同誌の編集長とお会いする機会があり、ここに掲げたリストを頂きました。但し、その頃既にバックナンバーは出版社にもほとんど無く、大部分の作品を読んだことがありません。どなたかご所持の方が居られれば、当館 宛にメールを頂けると幸いです。
- 『初めに』で紹介しました「性書・高資料とその作者の謎を追う」には、他の雑誌も含め、もう少し詳細な情報があります。
高資料叢書第一期10巻
編集 | 高資料整理委員会C、 2のみ日本裏文化研究会 |
発行 | 桃源書房 |
発行者 | 本田規雄 |
発売元 | 心交社 |
巻数 | 全十巻(四冊のみ刊行) |
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巻数 | 資料名 | 整理番号 | 発行日 |
1 |
窃視録 |
| 昭和58年 1月10日 |
少女教育の試み |
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マコト会始末記 |
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「夜ばい」の経験 |
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2 |
完全なる閨房 |
| 昭和58年 2月10日 |
少女コレクション |
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或部落の物語 |
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色の道 |
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3 |
好きな女 |
| 昭和58年 3月10日 |
美しき生贄 |
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卍ともえ合戦 |
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女子寮物語 |
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4 |
魔窟物語 |
| 昭和58年 5月10日 |
小さな色魔 |
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淫蕩尼 |
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一盗二婢 |
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5 |
妖かしの関係 |
| 未刊 |
大凧奇譚 |
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逢引クラブ |
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庄助さん |
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6 |
青い蕾 |
| 未刊 |
奔放な女 |
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富士見クラブ |
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淫蕩学生 |
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7 |
禁断の部屋 |
| 未刊 |
痴戯の夜 |
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花街奇譚 |
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覗きの季節 |
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8 |
ある願望 |
| 未刊 |
囚われの性 |
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異常な一体験 |
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9 |
美少女の血 |
| 未刊 |
背後の相姦 |
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村の性教師 |
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兄といもうと |
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10 |
家畜夫婦 |
| 未刊 |
少女のホテル |
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ロリータ娼婦 |
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悦楽研究会 |
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高資料叢書 |
刊行案内 |
- 補足
- 現在当叢書は手許にありませんので、書影を提示できません。悪しからずご了承下さい。
東芸版高資料
発行 | 東洋芸術院貴重文献刊行会 |
巻数 | 全十巻(六冊のみ刊行) |
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巻数 | 資料名 | 整理番号 | 発行日 |
1 |
天国の中の地獄 | 181 | 昭和60年 8月 1日 |
寝玉門を犯す | 216 |
人妻売春 | 200 |
女の味は一盗二婢 | 107 |
2 |
強姦願望の女 | 201 | 昭和60年10月 1日 |
女子寮エロ奇譚 | 214 |
赤貝と蛤 | 82 |
人妻の魅力 | 97 |
3 |
兄と妹の情事 | 171 | 昭和60年11月10日 |
中学生売春 | 98 |
淫蕩尼物語 | 113 |
おまんこに刺青 | 213 |
4 |
淫蕩録 | 234 | 昭和60年12月25日 |
5 |
淫蕩列車 | 96 | 昭和61年 2月25日 |
奇譚富士見倶楽部 | 101 |
少女の性教育 | 166 |
妖僧の淫溺祈祷 | 99 |
6 |
獣姦 | 217 | 昭和61年4月25日 |
セーラー服売春 | 86 |
三つ巴色遊び | 112 |
蛇淫 | 132 |
発表内容に就いて補足をすると、第一期の発表は完全な地下出版であり、所謂潤色を別にすれば内容に削除は無い。第二期は公刊誌である【えろちか】に発表されたこともあり、公開を憚る部分は総て削除されている。尤も、第二期分に就いては完全版の発表が無いので、本当に削除されているのか否かは不明であるが…。第三期の内{高資料叢書}は公刊書であるために削除がなされているが、東芸版{高資料}は無削除である。つまり、地下出版ということである。当時は題名のみ公表されて未刊であった作品には「未刊」と付記した。後になって題名を変更して刊行されたものもあったが、考証は後に譲る。
元々、地下流通雑誌の目玉として登場した「高資料」が地下本に流用されることに不思議はないが、名前が喧伝されている割には多くない。当館所蔵分では二冊のみである。本家が活動していたという事実が、地下本とはいえ、出し難くしていたのかも知れない。
地下本
書名 | 資料名 |
三月生まれ | 強姦願望の女 |
女粧天国 | 強姦願望の女 |
性器嗜虐症 |
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「三月生まれ」 |
「女粧天国」 |
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現在は、文章による猥褻表現が事実上解禁されたことにより、かつての地下本も店頭に並ぶ時代になっている。「高資料」も例外ではなく、河出書房新社の「秘本シリーズ」として刊行されている。
銀座書館による{風俗資料}の復刻は公刊とは言い難いが、地下流通と言う程のものではなく、東洋芸術院版とは逆に、公刊に近い半地下流通とでも言えようか。
風俗資料(復刻版)
発行 | 銀座書館 |
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巻数 | 資料名 | 発行日 |
1 | 閨鬼 | 昭和63年1月(?) |
肉の奴隷達 |
2 | 強姦願望の女 |
性器嗜虐症 |
3 | 臍下極楽 |
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秘本シリーズ(復刻)
発行 | 河出書房新社 |
監修 | 城市郎 |
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巻数 | 資料名 | 発行日 |
2 |
閨鬼 | 1997年4月 |
肉の奴隷達 |
16 |
強姦願望の女 | 1999年12月 |
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銀座書館の刊行案内 |
銀座書館の復刻版 |
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秘本シリーズ |
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- 補足
- 地下流通本と無削除公刊本を新たに追加しました。
- この他、伏せ字入りで刊行された公刊書として次のようなものがありますが、現在手許にはありませんので、書名のみ掲げます。
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書名 | 発行所 | 刊行年月 |
月下の女(強姦願望の女、閨鬼) | フランス書院 | 1982/11 |
濡髪の女 | 1982/11 |
強姦願望の女、性器嗜虐症 | 風俗資料刊行会 | 1982/5 |
閨鬼、肉の奴隷たち | 図書出版美学館 | 1982/3 |
強姦願望の女、性器嗜虐症 | 1982/4 |
臍下極楽 | 1982/6 |
閨鬼、肉の奴隷たち | ベストセラーズ | 1990/7 |
閨鬼、肉の奴隷たち | KKベストセラーズ | 1991/5 |