閑話究題 XX文学の館 雑誌資料
造化
雑誌【生活文化】が当局の介入(昭和二十九年六月)により潰れた翌月、その会員を引き継ぐ形で刊行されたのが【造化】である。編集人も広橋梵と変わりなく、連載ものも継続している。異なるのは、発行所が生活文化資料研究会から造化研究会になったことと、発行人が広橋梵の兼務から、川崎清一に代ったことぐらいで、本質に何ら変化はない。むしろ、より過激になって行ったと言う方が正しい。ヘアーヌード全盛、実写以外であれば殆ど黙認の今日でも、その全容を公にすることは不可能である。
【生活文化】からの連載としては、広橋梵訳の『フロッシイ』、伏見冲敬訳の『燈草禪師傳』、『艶本序文集』(中野栄三)、『陰名随筆』(花咲一男)などがある。
新たな連載として、J.デイヴンポート著、田 新一訳の『閨房秘戯指南』が当初の目的を達したが、『痴婆子傳』(芙蓉主人訳)、『イヴォンヌ』(広橋梵訳)などの翻訳物は、当局の弾圧による廃刊に伴い、中絶したままである。
洋物や中国物の他に、和物古典の紹介や訳述も当然あるが、『大東閨語』全編の口語訳と、『正写相生源氏』の全文掲載は、本誌中の白眉である。惜しむらくは、両書とも、挿絵が一部しか掲載されていないことであろうか。近代物の紹介としては、青山繁による『四季ざくら』、『ルツボはたぎる』(連載)が挙げられる。会員による告白物も前誌に続いて継続されている。
本誌は当局の軟派に対する圧力に屈し、丸一年ももたずに十冊を刊行したのみで廃刊されている。あまりに過激に走りすぎた点は否めないが、表通りも裏通りも軟派出版全盛の昭和三十年前後という時代を飾った、特筆すべき雑誌と言えるであろう。
造化(全十冊) |
判型 | A5判 |
|
編集 | 広橋梵 |
川崎清一(5月号より) |
発行 | 川崎清一 |
発行所 | 造化研究会 |
刊年 | 昭和二十九年七月三十日〜昭和三十年四月十日 |
創刊号 |
頁数 | 70頁 |
|
刊年 | 昭和二十九年七月三十日 |
目次 |
口絵写真:三葉六図(裸弁天像) |
創刊の辞 | 川崎清一 | 9 |
妖魔の魅惑
- 妖魔の獄
- 巫女の斧
- 悪魔の嫉妬
- 淫魔
- 吸血鬼
- 悪魔発作
- 魔女の膏薬
- 悪魔退治
- 魔の幻惑
|
坂ノ上言夫 | 10 |
大正の珍本 四季ざくら
|
青山 繁 | 23 |
艶本とシャレ
- シャレについて
- バレとシャレ
- 艶本のシャレ
- 地名をもじったもの
- 鳴き聲をもじったもの
- 物音をもじったもの
- 呼び聲シャレた例
- 会話をシャレた例
- シャレた表現の例
|
岡 鹿郎 | 29 |
奇本に關する十二年
- 1 伏字の魅惑にとりつかれ
- 2 便所紙につずられた文字
- 3 快書の写本に苦心惨たん
- 4 エビでタイの珍品ご入来
- 5 押収されぬといわれ失望
|
糸田太平 | 34 |
裸弁天考 | 菅原次郎 | 39 |
艶本序文集 第四段
- 仮宅深美どり
- 伊呂之雜染
- 祝言 色女男思
- 開精粹股伝
- 春色 恋の梯
- 国の基
- 色道無限算開記
- 開談遊仙伝
- 枕説色掃溜
- 鹿の巻筆
- 浮世閨中 膝磨毛
- 穴相撲四十八手
|
中野栄三 編 | 43 |
蜥蜴黒燒 | 岡田 甫 | 50 |
燈草禪師傳(三)
- 第三回 禪師 法力を施して牙床に大いに戰ふ
- 夫人 燈草を恋ふて甘心して邪を受く
|
伏見冲敬 訳 | 53 |
註入 藐姑射秘言(第一回) | 新井常雄 | 58 |
閨房秘戯指南(1)
- 本書はなぜ必要か ― 性交の歴史
- 第二章 性交五態
- 正常性交
- 肛門性交
- フランス流性交
- 快擦法
- 肉体性交
- 第三章 ファッキングの効用
|
J.デイヴンポート 著 田 新一 訳述 |
64 |
編集後記 | 裏表紙 |
目次 |
口絵写真:二葉四図(裸体主義者達) |
去勢の文化史 | 坂ノ上言夫 | 7 |
陰名随筆 六
|
花咲一男 | 17 |
艶笑落語 豆男マン遊記 | 青山 繁 | 22 |
会告 |
| 27囲 |
四十八手の俗名
- 本手(12種)
- 居茶臼(6種)
- 茶臼(7種)
- 横取り(7種)
- 後取り(9種)
- 寝後ろ
- 立膝形
- 立ちぼゞ(2種)
- 曲取り(8種)
|
蓮池一邦 | 28 |
『千夜一夜』挿画について
- バートン版の意義
- バートン版挿画の特色
- 一、姦通窃視の図
- 二、加虐露出慾の図(A・B)
- 三、強姦の図
- 四、美女の裸図
|
大場正史 | 32 |
明治のバレ句 柳風狂句合 | 広橋 梵 | 38 |
性コレクション
- 一、便所の落書のコレクション
- 二、千人針と毛ブクロ
- 三、性歴コレクション
- 四、情人コレクション
|
竜膽寺 雄 | 43 |
創刊号欠字補填 |
| 48末 |
現代アメリカ文学に於ける性愛描寫 | 大野 観 | 49 |
註入 藐姑射秘言(第二回) | 新井常雄 | 58 |
燈草禪師傳
- 第四回 楊官兒試情を爲して敗露し
- 小禪師色を貪りて亡身を受く
|
伏見冲敬 訳 | 66 |
編集後記 |
| 71 |
目次 |
口絵写真:二葉四図(ヴェランヂェ「好色歌謡集」挿画) |
處女はつくられるか? | 坂ノ上言夫 | 7 |
愛慾太平記 −川柳愛慾史続篇−
|
岡田 甫 | 14 |
『ファンニイ・ヒル』の初交描寫 | 大野 観 | 21 |
ハモニカ考
- 口淫とハモニカ
- ハモニカの起源
- 日本人はハモニカが不得手
- 過去の日本人とハモニカ
- ハモニカ演奏のポーズ
- ハモニカ奏法と演奏中の心得
- 醍醐味
|
阿南 岳史 | 27 |
産泰b社の彫刻 | 上野三郎 | 35 |
享樂族物語(1)
|
春野 遊 | 39 |
註入 藐姑射秘言(第三回) | 新井常雄 | 45 |
閨房秘戯指南 (2)
- 第五章 最善の避妊法
- 抜去
- 洗滌
- コンドーム
- 模造海綿
- 子宮栓
- 転位した子宮
- 第六章 初夜の心得
|
J.デイヴンポート 著 田 新一 譯述 |
53 |
完訳 フロッシイ
|
A.C.スインバーン 著 広橋 梵 譯 |
58 |
兎園小説外集より |
| 66下 |
燈草禪師傳
- 第五回 楊官兒 女兒の爲に婿を招き
- 李可白 新婚に因り妖を試む
|
伏見冲敬 訳 | 66 |
編集後記 |
| 71 |
目次 |
口絵写真:二葉四図(佛蘭西好色画集) |
性的饗宴 − 前説 | 坂ノ上言夫 | 7 |
艶本の研究 歌麿『床の梅』
|
並野 丈介 | 12 |
五十三次 驛路の鈴口
|
吾妻雄兎子 | 18 |
閨房秘戯指南 (3)
|
J.デイヴンポート 著 田 新一 譯述 |
22 |
新刊『乱れ雲』に就いて |
| 27囲 |
コント・アブテイク
|
武野藤介 | 28 |
艶笑秘事類話考
|
中野栄三 | 32 |
享楽族物語(2)
|
春野 遊 | 34 |
自慰記補遺 | 大門兵衛 | 40 |
老婆の處女性 | 二木 治 | 44 |
『性』への挑戰 | ヘンリイ・ミラア 大野 観 譯 | 46 50 |
いつわりの橋 ◇窃視症の展開例◇ | 角田庄次 | 51 |
たびなさけ | 南 治重 | 57 |
阿部定事件の性慾に關する部分の抜萃 並に大学の鑑定所見 | 宇佐見正夫 | 62 |
燈草禪師傳
- 第六回 禄衣郎の花燭に両佳人あり
- 紅衫女に風流の雙奇事あり
|
伏見冲敬 訳 | 65 |
百戰必勝訂補 | 九春同人 | 70囲 |
編集後記 |
| 71 |
目次 |
口絵写真:二葉四図(肉体の門) |
性的饗宴 前説(U) | 坂ノ上言夫 | 7 |
女性の自慰と冷感症 | M.D.S.O | 11 |
おるがずむ俗考
- 男のオルガズム女のオルガズム
- 殿方は御婦人のオルガズムがお好き
- オルガズムはどんな氣分か
|
阿南岳史 | 16 |
新選女学衛生教本 | 大野鶴郎 | 22 |
無射精完全性交法に就いて
|
金平太郎 | 25 |
五十三次 驛路之鈴口 第二回 | 吾妻雄兎子 | 31 |
好色二人女 −川柳愛慾史続篇−
|
岡田 甫 | 36 |
たびなさけ(その2) | 南 重治 | 40 |
完訳 フロッシイ
|
A.C.スインバーン 著 廣橋 梵 譯 |
47 |
閨房秘戯指南 (4)
|
J.デイヴンポート 著 田 新一 譯述 |
52 |
道學先生ノ猥談 |
| 55下 |
性器嗜虐症 風俗資料刊行会資料 |
| 56 |
夫婦の修身 |
| 63下 |
痴婆子傳
- 一、老女の侘び住居
- 二、いとけなき日
- 三、隣家の若妻
- 四、造花の攝理
- 五、おさななじみ
- 六、蕾ほころぶ
|
芙蓉主人 輯 | 64 |
編集後記 |
|
|
6号(増刊号) |
頁数 | 80頁 |
刊年 | 昭和二十九年十二月二十日 |
目次 |
口絵写真:三葉六図(世界性交風俗展) |
西洋婦人の性愛報告
- 一、下淫コンプレックスの女
- 二、検診台で欲情する女
- 三、弱い勃起力の男を愛する女
- 四、半処女
- 五、背向位を好む女
- 六、同性愛の女
- 七、耳を噛まれて悦ぶ女
- 八、精液を (ママ)じき出す女
- 九、覗かれて悦ぶ女
|
大野志女須 | 7 |
交会態位異名集 全
序言
- 一、御法と(ママ)主とした異称
- 二、態位異称
- 三、交会の凡称と秘語
|
中野栄三 編 | 18 |
戦後版 性愛俗語メモ
- (1) 一般に用いられるもの
- (2) PANGLISH
- (3) カレツジ・スラング
|
糸田太平 編 | 30 |
こひ のしら べ |
|
|
艶笑秘調 | 百合野朝子 | 35 |
川柳玉手箱 | 團珠庵主人 | 36 |
堀河右府と好色の局 |
| 40囲 |
大東閨語原画(二頁六図) |
| 41 |
大東閨語(おどけがたり)
|
江古田哲堂 口訳 | 43 |
花姉妹
- まえがき
- 第一章 初春の湯浴
- 第二章 春画の笑い
- 第三章 処女の花合せ
- 第四章 月夜の逢曳
- 第五章 晩春の訣別
|
朽木 寛 | 52 |
淫楽地獄
- 第一章 破瓜の悦び
- 第二章 伯爵未亡人
- 第三章 猛烈な姦淫
- 第四章 ヒロポン学生
- 第五章 恋は死なり
|
桜田左門 | 66 |
篭の鳥 | BON生 | 80囲 |
謹賀新年 |
| 裏表紙裏囲 |
編集後記 |
| 裏表紙裏 |
目次 |
口絵写真:二葉八図(快絶の表情) |
母bの饗宴 | 坂ノ上言夫 | 7 |
腎情歌集 その1 | 珍遊亭可笑 | 11囲 |
アメリカ女性の性生活
- 一、タクシイの中の激情
- 二、路傍の戯れ
- 三、肉体を売るべきか?
- 四、妻の肉体
|
大野志女須 | 12 |
オルガズムの随伴現象 | 阿南岳史 | 18 |
逢曳日誌 その一 | 吉祥寺三郎 | 22 |
子犬つれづれ |
山東京伝作 江古田哲堂註 |
27 |
『ムーア人のハレムの一夜』
|
甘戸繁多 | 31 |
勞働者の性典 | 角田庄次 | 34 |
ルツボはたぎる(房子の巻) | 青山 繁 | 42 |
腎情歌集 その2 |
| 48囲 |
註入 はこやのひめごと 後編(2) | 新井常雄 | 49 |
若い尼僧と唖のふりした男
|
羽田新一 訳 | 56 |
痴婆子傳(第二回) | 芙蓉主人輯 | 61 |
腎情歌集 その3 |
| 63囲 |
五十三次 驛路之鈴口 第三回 | 吾妻雄兎子 | 64 |
新色巴歌留多 |
| 裏表紙裏囲 |
編集後記 |
| 裏表紙裏 |
目次 |
口絵写真:二葉五図(山海の珍味) |
娼婦の座右書(第一回) | 松戸 淳 編 | 7 |
近親姦の報告
|
大野志女須 | 15 |
快絶の表情
- 「菩々の味凡そたとうるものはなし」
- 女性器の生理的現象
- 表情と動作
- 目をつぶる
- 額に皺
- 頬と耳の紅潮
- 口を開く 歯をくいしばる 食いつく
- 口がかわく
- 足ゆびをまげる
- ふるえる
- 身悶え
|
阿南岳史 | 22 |
逢曳日誌(二) | 吉祥寺三郎編 | 28 |
会員性史 早熟少年記 | 志村喬二 | 32 |
ルツボはたぎる(二)
|
青山 繁 | 35 |
三浦三崎の女 | 荒賀文雄 | 40 |
《風俗資料 摘録2》
|
| 48 |
艶本 三ツ組盃 上の巻
|
江古田哲堂編 | 53 |
逸題本より
- (一)処女及び年増を御する法
- (二)淫精を長く保つ秘訣
|
巫觀堂主人 | 55 |
現代珍本 満久良嘉賀美 全
|
團珠庵主人編 | 57 |
完譯 イヴォンヌ(1)
|
メアリ・サキット 作 廣橋 梵 譯 |
60 |
註入 藐姑射秘言(後編第三回) | 新井常雄 | 62 |
痴婆子傳(第三回) | 芙蓉主人輯 | 68 |
会員だより |
| 裏表紙裏囲 |
編集後記 |
| 裏表紙裏 |
目次 |
池大雅戯画 | 表紙裏 |
口絵写真:一葉二図(了仙寺秘佛) |
性生活の理論と實踐 性行為について(T)
- 一、性行為と男女の役割
- 性器の収縮及び充血
- コイトウスと妊娠
- 男女のオーガズム
- 二、理想的性行為を阻む障害
- 性器の位置と態位の不自然さ
- 重大な膣口の傷害
- 女性器の感覺過敏
- 勃起と勃起不全
- 相對的インポテンス
|
J.ルトゲルズ博士著 羽田新一譯述 |
5 |
リンガとヨニの具備すべき必要條件 | 宇佐見正夫 | 12 |
娼婦の座右書(2) | 松戸 淳 編 | 16 |
目次カット解説 |
| 21囲 |
艶本の諧謔趣味
- 江戸艶本のおかしみ
- 例の一 軍談風のもの
- 例の二 浄瑠璃風のもの
- 例の三 滑稽話風のもの
- 例の四 オチのあるもの
|
並野丈介 | 22 |
予告 |
| 27囲 |
艶笑コント 騒聲喃語集(1)
|
夢洞山人 | 28 |
段々少なく | 笑林広記 | 31囲 |
お願ひ |
| 31 |
会員性史 金髪女の想い出 | 青木敏夫 | 32 |
不問語
|
忍川柳三 | 38 |
ルツボはたぎる 第三回
|
青山 繁 | 41 |
口繪解説 了仙寺秘佛に就いて | 原 比露志 | 47囲 |
性に目覺める頃
|
多 ? | 48 |
五十三次 驛路之鈴口 第四回 | 吾妻雄兎子 | 54 |
註入 藐姑射秘言(完) | 新井常雄 | 59 |
痴婆子傳(第三回) | 芙蓉主人輯 | 61 |
会員だより |
| 裏表紙裏囲 |
編集後記 |
| 裏表紙裏 |
10号(正寫相生源氏特輯號) |
頁数 | 71頁 |
刊年 | 昭和三十年四月十日 |
目次 |
口絵写真:二葉四図(正寫相生源氏挿絵) |
解題 | 貯月亭主人 | 7 |
凡例 |
| 14 |
正寫相生源氏 |
| 15 |
相生源氏の叙 |
| 16 |
正寫相生源氏 上之巻
- 第一 北嵯峨のまき
- 第二 初寝のまき
- 第三 室町のまき
|
| 17 |
正寫相生源氏 中之巻
- 第四 返花のまき
- 第五 過去のまき
- 第六 変詐のまき
|
| 33 |
正寫相生源氏 下之巻
- 第八 地蔵堂のまき
- 第九 古今伝授のまき
- 第十 惚薬のまき
- 第十一 丑の時詣のまき
- 第十二 祝言のまき
|
| 48 |
絵の鑑賞と詞書
|
| 63 |
後記 |
| 裏表紙裏 |