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美和書院刊行の叢書紅鶴版十二巻の別巻として追加刊行されている。同叢書の「茨の垣」や「風流賢愚経」が好評を博したものか、急遽登板となったものである。 内題に「続風流賢愚經」とある通り、「風流賢愚經」の続編である。 「僧房夢」の「御寄附御礼」と題するビラに「近日更に「後説賢愚經」を同じく上梓の予定であります。 「後説賢愚經」の特色は、大部分が書き下しの新作にて、勿論前後篇を通じて、一貫した筋のものではありますが、特に後篇は前篇を読まれない方にも、独立して鑑賞なしうるやう塩梅してあります。 …略…右賢愚經は、前後篇を通じて八巻、即ち法華経八巻を象ったものであります。」とあり、「風流賢愚經」の続編として、書き下ろしたものである。 自ら書いた「賢愚經」の解題が正しければ、戦災で焼失した部分を、改めて執筆したことになる。 只、「大部分が書き下し」のくだりは少し気にはなる。 「大部分」と言うことは、そうでない部分もあると言うことになり、戦災で焼失しないで残っていた部分が存在したということであろうか? 氏の作品には構想と推敲と仮託が常に傍らにあり、何を以て定本とすれば良いのかの判断をしづらくしているのもまた事実であろう。 |