相対会の研究報告はその内容を大きく論文、資料、参考に分類される。論文は小倉清三郎の性に関する論考であり、「相対」の本来の目的はこれにあった筈である。その為に必要な資料を収集する目的で相対会が組織され、会員自身或いは会員を経由して入手して来たのが体験手記である。従って、本来体験手記は論文の参考資料として使われるべきものであった。【相對】第九集の『戀愛と凌辱』などがその例である。
所が、参考資料である筈の体験手記がそれ単独で頒布されるようになり、結局は研究報告に資料として分類される最大のカテゴリーになってしまった。因みに、参考として分類されるものは、性典、春本、川柳など既に原作が存在するものの、原作自身を頒布した場合のカテゴリーである。
論文では硬すぎて話にならず、参考では陳腐過ぎると、敬遠していた地下本業界も、資料ならば話は別である。全くの新作が大量に発表されたのと同じ状態と捉え、「相対」を原作とした地下本が出回ることになる。
但し、常に当局から睨まれている会としては、会員だけに頒布している資料が会の外へ流出するのは問題が大き過ぎるので、当然の如く細心の注意を払って処理していた(とは言え、完璧を望むのは無理であり、当然流出は発生する)。その結果、地下本に流用されるのは雑誌時代の資料か、ガリ版初期の資料が多い。また、地下本業者から見れば当然のことながら資料は入手し難いので、一旦流用されたものは使い回されることになる。
この様な地下本に流用された資料の内、所蔵分を列挙してみる。勿論ここに掲げたもの以外にも多数存在すると思われるが、それらは確認でき次第追加して行く予定である。
資料名 | 初出資料 | 復刻版 号数 | 流用資料 | 流用時タイトル |
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戀愛と凌辱 | 相對 第九集 | 13 17 | 愛慾實戰記 | |
仇枕浮名の横櫛 | ||||
冬子女史の記録 | 相對 第十三集 | 29 | 愛慾實戰記 | 冬子女史の日記 |
小米桜 | ガリ版 | 21 | 小米櫻〔A〕 | |
小米櫻〔B〕 | ||||
{稀書復刻全集 3} | ||||
赤い軒燈の家 | ガリ版 | 20 | 屋島の合戰 | |
魔窟の一夜 | ガリ版 | 13 | 屋島の合戰 | |
羞花秘情史 | ||||
寝室の戯れ[A] | 初めて私娼に出た女 | |||
寝室の戯れ[B] | 初めて私娼に出た女 | |||
歌子といふ女 | ガリ版 | 22 | 屋島の合戰 | |
寝室の戯れ[A] | ||||
寝室の戯れ[B] | ||||
莟の花 | ガリ版 | 16 | 屋島の合戰 | 蕾の花 |
羞花秘情史 | 蕾の花 | |||
寝室の戯れ[A] | ||||
寝室の戯れ[B] | ||||
菊の井の女將 | ガリ版 | 8 | 屋島の合戰 | |
寝室の戯れ[A] | ||||
寝室の戯れ[B] | ||||
倫敦ハイドパークの夜 | ガリ版 | 10 | 屋島の合戰 | |
羞花秘情史 | ||||
朝鮮綺譚 | ガリ版 | 17 | 愛の遍歴 | |
田原安江 | ガリ版 | 15 | {世界珍籍選集 別巻}(下の巻) | 安江と云ふ女 |
避難宿の出来事 | ガリ版 | 11 | おもひでの記(旅の嵐) | |
細浪 | 露時雨 | |||
{世界珍籍選集 別巻}(上の巻) | 避難宿の五日 | |||
旅まくら | ||||
避難宿 | ||||
避難宿の五日〔A〕 | ||||
避難宿の五日〔B〕 | ||||
あひびき | ? | 34 | 彩情記 | |
しのび逢い | あいびき | |||
夫婦波 | 春のしとね | |||
春 | 春のしとね | |||
待合乃女 | ||||
春遠からず 《粋珍本解題選 1》 |
上記の内『あひびき』は 4−2−1.『田原安江』と『あひびき』(待合の女) で述べている通り、原相対に存在した資料であることが疑わしいのであるが、異本としてはこちらの方が多いので、『田原安江』としてではなく、別の項目とした。
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