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閑話究題 XX文学の館 秘本縁起

公刊された
「バルカン・クリーゲ」


戦前は、総て非合法かそれに近い形での刊行でしたが、戦後になって出版が自由化されたためか、悪名高き艶本であった「バルカン・クリーゲ」も公刊されるようになりました。しかし、名ばかりの自由化という現実に、昭和四十年頃までに刊行されたものは、ほとんどが摘発を受けています。


バルカン戦争(東京書院版)

「蚤の浮かれ噺」を刊行し、戦後の翻訳物艶笑本ブームの先駆けとなった、とされる東京書院では、第二段として「バルカン戦争」を刊行しています。

表紙
本文
判型B6判頁数325頁
著者ウィルヘルム・マイテル
訳者矢野正夫
発行東京書院
刊年昭和二十六年六月(摘発
目次
  • 戦争酣なりし時
    • 序章
    • 第一編
      • 第一章 国中から男を奪われた女達
      • 第二章 独り寝に悶える指揮官夫人
      • 第三章 下男と愛を囁いた令嬢
      • 第四章 伯母に情人を盗まれた娘達
      • 第五章 愛犬との秘戯を覗かれた夫人
      • 第六章 麻酔薬で強引にせしめた中尉
      • 第七章 一晩中裸でふざけた貴婦人達
    • 第二編
      • 第一章 男の魅力に現つをぬかした公女
      • 第二章 逆に乗り潰された婦人騎手
      • 第三章 絶倫の勇者と賞賛された大尉
      • 第四章 百姓娘に翻弄された歩哨
      • 第五章 色好きな敵軍を歓迎した女達
  • 戦争による残虐と淫逸
    • 第一編
      • 第一章 二人掛りで満足した伯爵夫人
      • 第二章 妻の浮気に義妹と戯れた商人
      • 第三章 鈍感な男に驚嘆した姉妹
      • 第四章 貞淑な夫人に手を焼いた隊長
      • 第五章 農夫の部屋に忍び込んだ兵士
    • 第二編
      • 第一章 美少女に洗礼した二人の中尉
      • 第二章 侍女の身替りで楽んだ人妻
      • 第三章 遂に悲鳴をあげた騎兵隊長
      • 第四章 女学生に傳授した兵士達
      • 第五章 娼家の主人になった聖處女
      • 第六章 十人の男を負かした好色夫人
      • 第七章 ハレムの美女に降参した士官
      • 第八章 五人の妻に迎えられた指揮官
    • 後章

バルカン戦争(紫書房版)

戦後の昭和二十年代後半、艶笑本出版の雄として、所謂発禁本を立て続けに刊行した紫書房は、{世界艶笑文庫}シリーズの第五集として「秘話バルカン戦争」を刊行しました。同シリーズは、昭和初期に出版された地下、半地下出版の艶本を和文和訳して目次を薄め、公刊書としての体裁を保とうとして、ことごとく摘発を受けたものです。本書も、当然の如く摘発を受けています。 口絵にバルカン戦争挿絵の中から一図を採用しています。

表紙
本文
判型B6判頁数238頁
著者ウイルヘルム・マルテル
訳者松戸 淳
発行紫書房
刊年昭和二十六年七月(摘発
造本原画挿絵一葉
目次
  • 第一篇 〜 第四篇

硝煙の影に(銀河書房版)

戦後の艶笑本出版ブームの折、個人名で参戦して名を馳せた藤井純逍が刊行したのが「硝煙の影に」です。同氏が絡んだものは殆どが摘発されていますが、何故か悪名高き「バルカン戦争」である本書は、摘発を逃れています。

表紙
本文
判型B6判頁数252頁
著者ウイルヘルム・マイテル
訳者藤井純逍
発行銀河書房
刊年昭和二十六年十二月
目次
  • 上巻 銃後の女達
  • 序  章
  • 第 一 章 男ひでりに悩む女たち
  • 第 二 章 指揮官婦人とその下男
  • 第 三 章 伯母の眼を盗む二人の姪
  • 第 四 章 奇妙な共同生活
  • 第 五 章 騎兵隊長夫人の秘密
  • 第 六 章 最後の手段は麻酔薬
  • 第 七 章 最初の大夜會
  • 第 八 章 饗宴への参加資格
  • 第 九 章 新しい魅力の探求
  • 第 十 章 捕らえられた處女妻
  • 第十一章 素晴らしい大饗宴
  • 第十二章 二人の歩哨の要求
  • 第十三章 侵入した敵の部隊
  • 第十四章 歡迎された敵軍
  • 後篇
  • 第 一 章 焦らされた二人の中尉
  • 第 二 章 牡丹くずるるとき
  • 第 三 章 浮氣な妻に對抗した男
  • 第 四 章 天罰を受けた女たち
  • 第 五 章 手こずつた司令官
  • 第 六 章 襲われた農家の母娘
  • 第 七 章 蹂躙された占領地
  • 第 八 章 愛の闇試合
  • 第 九 章 優勢な女軍の攻撃
  • 第 十 章 荒らされた處女の花園
  • 第十一章 慰安所となつた寄宿舎
  • 第十二章 十人抜きをした夫人
  • 第十三章 トルコ女の魅力
  • 第十四章 凱旋した指揮官
  • 補  章

BALKAN KRIEG(利根書院版)

先の銀河書房版のリメイク版です。発行は銀河書房のままですが、発売元を利根書院名義にしていますので、区別のため利根書院版としました。銀河書房版の時は摘発を受けずに無事でしたが、同じ内容の本書は摘発を受けています。

表紙
本文
判型B6判頁数252頁
著者Wilhelm Meitel
訳者藤井純逍編著
発行銀河書房、発売所:利根書房
刊年昭和三十五年八月(摘発
造本ハードカバー、本文アンカット、口絵一葉
目次銀河書房版と同一

戦火に哭く女(浪速書房版)

世界秘密文学選書の第二期別巻第三として刊行されましたが、同選書は本書も含め、数十冊に及ぶ大半が摘発を受けています。本文とは関係のない普通のヌード写真が巻頭四頁に亘っている所が、いかにも商売を優先させている、という雰囲気満点です。

表紙
本文
判型新書判頁数320頁
著者ウイルヘルム・マイテル
訳者清水正二郎
発行浪速書房
刊年昭和三十九年八月(摘発
目次
  • 前篇
  • 第 一 章 男のない女達
  • 第 二 章 独り寝の苦しさ
  • 第 三 章 令嬢を抱く下男
  • 第 四 章 母と娘の争い
  • 第 五 章 麻酔薬で犯される
  • 第 六 章 愛犬との秘戯を覗かれた夫人
  • 第 七 章 裸の貴婦人
  • 第 八 章 淫らな公女
  • 第 九 章 馬に乗る女
  • 第 十 章 絶倫の大尉
  • 第十一章 百姓娘と歩哨
  • 第十二章 敵軍も女なら怖くない
  • 後篇
  • 第 一 章 満足した公爵夫人
  • 第 二 章 妻の浮気に義妹と戯れた商人
  • 第 三 章 鈍感な男と好色な女
  • 第 四 章 貞淑な夫人
  • 第 五 章 侍女の身替りで楽しんだ人妻
  • 第 六 章 農夫の部屋
  • 第 七 章 美少女の洗礼
  • 第 八 章 悲鳴をあげた騎兵隊長
  • 第 九 章 女学生と兵士達
  • 第 十 章 娼家の主人になった聖処女
  • 第十一章 好色夫人
  • 第十二章 ハレムの美女
  • 第十三章 五人の妻

バルカン戦争(山王書房版)

山王書房から出版された本書は、管見の範囲では、どの発禁本リストからも洩れていますが、所蔵本の裏見返しには「四十四 七 発禁本」、と手書されています。事実関係は判然としませんが、警告以上のことがあったことが想像できます。

箱と本冊
表紙
本文
判型B6判頁数294頁
著者ウイルヘルム・マイテル
訳者安芸 順
発行山王書房
刊年昭和四十三年五月(摘発?)
造本ハードカバー、しおりひも、カラー口絵、挿絵共八葉
目次
  • 〈序曲〉バルカンを覆う戦火
  • 女だけの町
    • ヘレーネ夫人の周囲
    • 白い豚は屠殺しろ
    • 愛犬を飼っていたばかりに
    • なだれのごとく狂乱へ
  • 汚された女の復讐
    • バァンヤ敵陣へ走る
    • 目標は敵司令官官邸だ
    • ヘレーネ夫人の場合
    • 狂った関係
    • 野戦司令官のその後
  • バルカン戦線
    • 兵士達の日常
    • いま一つの戦線
    • 報復奇襲
    • 待女に替って敵と楽しんだ人妻
    • 貴族夫人との優雅な関係
    • サンクチュアリ(聖域)
  • 新しい局面
    • 第四連隊
    • 肉の送別会
    • 雌どもを精神病院に収容しろ

バルカン・クリーゲ(河出書房新社版)

昭和三年の初訳から、出版すればほぼ確実に摘発の対象となっていた、「バルカン・クリーゲ」ですが、情勢の変化は、遂に完全な形での公刊を実現しました。河出書房新社から「性の秘本コレクション」シリーズの第三巻として刊行されたものは、戦前の「バルカン戦争」を元にリメイクしたものです。かなり現代風にアレンジされていますので、往時の状態を知ることは出来ませんが、今でも手に入り、巻末の城市郎氏の解題も詳しく、良書といえるでしょう。

表紙
本文
判型文庫判頁数380頁
著者ウィルヘルム・マイテル
監修城 市郎
発行河出書房新社
刊年一九九七年六月
目次
  • 戦争酣なりし時
    • 第一編
      • 第一章 〜 第七章
    • 第二編
      • 第一章 〜 第五章
  • 戦争による惨虐と淫逸
    • 第一編
      • 第一章 〜 第五章
    • 第二編
      • 第一章 〜 第六章

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