本書は従前から日本文献書房版と言われていましたが、河出書房新社版の解説に於いて、城市郎氏は、梅原北明が全冊押収された「戦争勃発」の代わりに刊行したものではないだろうか、と言う旨の推測をされています。『造本、装幀の堅牢、豪華なできばえから、同業ライバル他社の追随を許さぬ卓越した技倆を有していた文藝市場社の本と見てよいのではないか。』
とその理由を述べています。
確かに、装幀が文芸市場社本のように見えるのも事実です。しかし、戦前に刊行された「バルカン戦争」はどれも豪華な造本であり、本書だけが突出している訳ではありません。また、確証がありませんが、三田書院版にも北明が絡んでいるとすると、余りにも「バルカン・クリーゲ」に拘り過ぎていて、北明らしくないとも言えるのではないでしょうか。さらに、書名の「バルカン戦争」にも引っ掛かるものがあります。「バルカン戦争」という書名を最初に使ったのは、日本文献書房であり、北明自身は、「戦争勃発」または「バルカン・クリーゲ」としています。もう一度出すのであれば、どちらかを使用するか、別のタイトルを考えるのではないでしょうか。少なくとも、日本文献書房の後塵を拝するような書名は付けないと思います。但し、本書の扉には「私的出版1927年10月、各冊番號入400部限定」とあり、手書きの番号が入っていますが、この日付は実際の刊行とは関係なく、原本のものであろう、という意見には賛同します。
判型 | 四六判 | 頁数 | 371頁 |
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発行 | 日本文献書房 | ||
刊年 | 昭和三年十二月頃(?) | ||
限定 | 400部 | ||
造本 | 本文二度刷、総革装 | ||
内容 |
上巻
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日本文献書房の実質的責任者が眞保三郎から八雲井孝治郎に移った後、刊行されたのが本書です。普及版として案内が出されましたが、同じ日本文献書房の前書と区別するために、通称八雲井版と呼ばれているものです。表紙と背には「Balkan-Krieg」と箔押されていますが、本扉は「バルカン・クリーヂ」、上下巻の扉は「バルカン戰争」になっています。
判型 | 四六判 | 頁数 | 178頁 |
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発行 | 日本文献書房 | ||
刊年 | 昭和四年十一月 | ||
限定 | 500部 | ||
造本 | 本文すみれ色用紙、布クロス、箔押 | ||
目次 |
上巻
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一般に南辰堂の刊行と言われています。本人も南辰堂と名乗っていますが、正確には南辰堂書院のようです。主宰は加藤南辰ですが、出自はよく分りません。後に、日建書院、藤架社と名義を変更しています。本書は背革のまずまずの装幀ですが、書留送料込みで八円五十銭は少し高いと思われます。
判型 | 122×178 | 頁数 | 370頁 |
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発行 | 南辰堂 | ||
刊年 | 昭和四年三月頃(?) | ||
造本 | 背革装 | ||
内容 |
上巻
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昭和七年六月頃、三田書院から刊行されたものと言われています。城市郎氏は北明の手になるものとしていますが、根拠となる情報源が分りませんので、確定は控えます。
判型 | 四六判 | 頁数 | 371頁 |
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発行 | 三田書院 | ||
刊年 | 昭和七年六月(?) | ||
造本 | 本文二度刷、総革装 | ||
内容 |
上巻
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本書に関わる一切は全く分りません。典型的な地下本ですが、扉のデザインなど日本文献書房版を忠実に再現しています。
判型 | 菊判 | 頁数 | 上巻 | 60丁 |
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中巻 | 64丁 | |||
下巻 | 48丁 | |||
造本 | ガリ版、袋綴 | |||
内容 |
バルカン戦争 上巻
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