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閑話究題 XX文学の館 駄文雑録

丸二年を振り返って


当館開設以来丸二年が過ぎ、三年目が進行中であるが、世間様から当館がどの様に利用されているか、或いは見られているのかを振り返ってみた。「ご利用上の注意事項」でも述べたように、当館を公開した目的は、個人では作成不可能な地下本の完璧なる書誌を、より完成に近づけるための情報を提供して貰うことであった。必ずしも直接的な提供を望んでいる訳ではなく(それが一番有り難いのではあるが)、出版を初めとした他のメディアで、資料なり、自説なりが開陳されれば良いと考えていた。

現今の状況から、Webによる同好のサイトが立ち上がることが理想ではあったが、発禁本や地下本を主なテーマの一つ(内容ではなく、本)として扱っているサイトは、管見の範囲では後発のカオスの本棚以外知らない。先発のDAS KABINETT DES YAMANAKAにも「発禁本回収本」と題するコーナーがあるのだが、本格的に書誌が語れる方だけに、長期に亘って更新が滞っているのが惜しい。

開館に当たって、「地下本」という分野の、内容を扱うならともかく、書誌では人は集まらないとの予想から、多くのサイトで行っているカウンタと掲示板は付けなかった。数字が上がらないカウンタはみっともないし、書込のない掲示板もみすぼらしい、という見栄がそうさせた訳であるが、誰か見に来てくれているかどうかが気になるのも、小心者の見栄が成せる業である。アクセス解析なるものを付けることも考えたが、CGI を使用出来ないプロバイダであったこともあり、諦めた。無料のアクセス解析もあるが、広告バナーが入るのがいやで、これは最初から考慮していなかった。最後の手段として、姑息にも隠しカウンタなるものを設置した。トップページから入って来るとは限らないので、主なテーマの入り口に用意した。

開館一ヶ月の新規サイトにアクセスがあろうはずがなく、当然とは言いながら、ほとんどカウンタはアップしなかった。それでも、何処のカウンタも反応しないということはなく、何れかのページにアクセスされていることは確認出来た。ただ、トップページのカウントは微々たるもので、当初は「展示室」のカウントが多かった。地下本の展示とくれば、と言うことだったのであろうか。三ヶ月目の終盤では「資料室」が逆転していた。当館の目玉と位置づけた「資料室」の中でも、主力コンテンツであった「彌縫録」のカウントは芳しくなかった。一気に作り上げることが出来ず、二ヶ月強の時間が掛かったことが原因と思われる。しかし、ここも形が整い始めた三ヶ月目に入ると徐々にカウント数が増えていき、当館中最もカウントが多くなった。この頃になると、色々な検索エンジンに登録されるようになり、その結果が反映されたものと推察される。

カウンタによるアクセスの傾向が見えてくると、そのことに興味が湧き、もう少しカウンタの設置場所を増やしてみた。結果、奇妙な現象に出くわした。設置して十日程は一桁だった「ご利用上の注意事項」が突然アップしだしたのである。利用上の注意などは、自身が人様のサイトに行ってもほとんど見ることはないので、カウント数が少ないのが当然と思っていたのであるが…。一月遅れでスタートしたカウント数は、その月の終わりにはトップページを越える数値になってしまった。トップページからしかリンクされていない、特に興味のある文言があるとも思えないページが何故そのようになったかは謎である。俗に言われる晒されたにしても、晒すような内容ではないと思うが…。同様の現象が、翌月の「リンク集」でも起きた。カウントが上がり始めて一月ちょっとで、それまで最も多かった「彌縫録」を抜き、初めて1000の大台に乗った。こちらの方は、リンク集が利用される可能性があることから、理由はともかく、喜ばしい限りである。

丸一年経ってトップページの平均カウント数は約6.6/日、必ずしもトップページを経由してはいないようなので、一日平均十人程度のアクセスはあったのでは、と推測される。微増はしても、この傾向はサイトを引っ越すまで変わっていない。最もカウント数の大きい「彌縫録」が一日平均11カウントであるから、十人前後の訪問者という推測はそれ程的を外してはいないのではと思われた。

この人数では、感想なりお叱りなりのメールを期待することに無理があるのは当然で、両手で数えられる程度の方から頂いたのみである。それに数倍する宣伝のメールは来ているが…。

サイト公開後、一年半を迎える頃、当館のあったプロバイダ(外資)が日本を撤退したことに不安を覚えて、別のプロバイダ探しを始めた訳であるが…。無駄(?)に多い拡大画像ファイルが理由で、当時 60MB を越えるディスク容量に達しており、先を見越した容量をまかなえるプロバイダの中に気に入った所が無かった。この際であるから、アクセス解析もしたかった。出した結論は、当初全く想定もしていなかった、レンタルサーバの使用であった。それ程高額でもなく(一寸した古書一冊の値段より安い)、料金は増えるが、容量の心配もなさそうな所に決めた。アクセス解析の代わりに、生のアクセスログが手にはいることも魅力であった。どうせレンタルするなら独自ドメインも、と悪乗りし(登録料以外の費用が不要であったこともあるが)、現在に至っている。

サーバ側が用意している日毎のアクセス解析結果もあるのだが、生のログがあるのであるならば、それを使わない手はない。リファラやキーワードを抜き出して閲覧の傾向を見るのは簡単である。ブラウザが IE の場合のみではあるが、「お気に入り」に入れてもらえる頻度も分かる。

最初に生ログを分析して予想外だったことは、経由所か、ほとんどがトップページからは入って来ないことと、キーワードの内容である。トップページ以外から入って来ているであろうことは、先の隠しカウンタの動向と、ほとんどの大手ディレクトリに登録されていない現実から、当たり前と言えば当たり前であるが、それにしても、これ程認知度が低いとは思わなかった。これでは、当初の目的であった、当館が呼び水になって、埋もれた地下本を世に出す、という方針は全く的外れだったことになってしまう。 キーワードに就いては、噂には聞いていたが、確かにひどい。一体インターネット(Webサイト)に何を期待しているのであろうか。日本語で検索なぞせず、英語で海外のサイトを検索すれば、嫌と言うほどあるというのに。とは言っても、それらのキーワードに引っ掛かる文言が当館に結構あるのもまた事実である。特に「資料室」「関連資料」にある「りんが・よに参考資料図譜」のページは連日盛況である。ほとんどがそのままお帰りになられているようであるが…。

キーワードでいえば、「伊勢物語」「芥川龍之介」「みだれ髪」等古典近代を問わず、文学系の語句で検索してくれた人には申し訳ない気がする。著名な言葉を拝借してタイトルに使用にするのは地下本の常套手段なので、まじめに検索して当館に来たらこの内容だった、では呆れたを通り越して、怒りすら覚えているかも知れない。本当に申し訳ない。

予想通り多かったものとして「四十八手」と関連用語がある。但し、これも先の状況と同様、館内を見て頂けることはほとんど無い。ちょっぴり色っぽくはあっても、普通は検索対象にはなり得ないと思われたキーワードに「姉妹妻」があった。確かに、「姉妹妻」というタイトルの地下本は存在するが、そんなものの存在が世の中に広まっているはずもないのに、目に付く程多いのが気にはなっていた。最近になって、同じタイトルの十八禁ゲームがあることを知り、成る程と納得した次第である。

では、本題の「地下本」という語句での来訪が如何であったかを見てみると、これが実にお寒いかぎりである。ほとんど無いのである。余り想定していなかった、「発禁」「発禁本」の方が遥かに多い。他に同種のサイトが存在しないので、「地下本」で検索すれば、大手のロボット型検索エンジンのほとんどでトップに表示されるのに、その語句では誰も来ない、と言うことは、検索の単語として使用されていない、と言うことと同義であろう。用語としての認知度の問題ではあろうが、情けない思いが胸の内をよぎる。

実態を調べてみると、平成十四年七月末現在、YAHOO!には「発禁本」で引っ掛かるサイトは一件もない。「発禁」では一件出てくるが、既に改称した同人グループの旧称の一部であって、 発禁本とは何の関係もない。「地下本」は一件見付かるが、単語の区切方を間違えているだけで、これも全く無関係のサイトである。一般的には、日本に於けるYAHOO!のディレクトリは Web の世界では権威あるものとされているが、そこに一つのサイトも無い、と言うことが、これらの本の置かれている立場を如実に物語っているのではないだろうか。過去のブームはさておき、現今もそこそこのブームのように思えるのだが…。ブームの本質が異なるのかも……。

現在、多くのポータルサイトに利用されている LookSmart のディレクトリでも、「発禁本」では検索出来ず、「発禁」で三サイト、その内、本に直接関係のあるのは先のDAS KABINETT DES YAMANAKAのみである。「地下本」では当館のみである。両サイトとも最近登録された所を見ると、世間の「発禁本」「地下本」に対する関心度が低い、と言うことを追認したに過ぎない。ただ、YAHOO!とは異なり、自分で探してきて登録しているので、将来に対する展望としては、一条の光が見えてきたと思いたい。

ロボット型の検索エンジンでは、google「地下本」115件中42件が当館、その他には、カオスの本棚が3件、現代に於ける地下本の復刻関連、裏本関連などが対象になっている。「発禁本」では流石に多く978件、内当館が36件、先の二サイトも含めバラエティに富んだサイトが検索されるが、書誌とまでは行かなくとも、本の紹介を行っているサイトはあまり見当たらず、販売目録系のサイトが目立つ。これで見る限りは、関心が無い訳ではなく、サイトとしてまとまるほど情報量が集中している所が無い、と言うことのようである。と言うか、そうであって欲しい。

現在当館への一日の訪問者数は、多くの勘違いを含めてそこそこの数であるが、遡って見てくれる人も含めて、トップページを通過するのは相変わらず少なく、訪問者全体の十分の一にも満たない。この傾向は相変わらず続くものと思われるが、十分の一の絶対数を上げるべく努力を続けるのが今後の課題であろうか。それにしても、他に同種のサイトが立ち上がってくれないものだろうか…。奮闘はしていないが、孤軍には結構辛いものがある。


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