閑話究題 XX文学の館 雑誌資料
カーマシャストラ
梅原北明が上海から発行したとされる伝説の雑誌である。雑誌【変態資料】を離れた北明が同誌に対抗する意味で、文芸誌から風俗誌に変わって休刊中であった【文芸市場】を三度方向転換して、軟派誌化させて続刊した。しかし、発禁に継ぐ発禁で立ち行かなくなり、官憲から逃れる意味もあって海外逃亡を企て、上海から発行したとされるものである。但し、本当に上海で印刷発行したのはNo.1のみで、その他は名目は上海になっているが実際は国内で印刷したものである。No.1の目次に第三巻第十號とある様に、誌名を変えただけで【文芸市場】からの通巻を記載している所からも、元来、本誌は【文芸市場】と一緒に考えなければならないものである。
北明を初め酒井潔、佐藤紅霞といった文献派で固めた陣容は他誌を圧倒するものがある。内容も佐藤紅霞の『蚤十夜物語』のような純粋な猥本の翻訳もあれば、『狂言痴語抄』(江戸艶本の序文集)、石角春之助の『續淺草裏譚』のように資料として重要なものなどバラエティーに富んでいる。特筆すべきは、No.5で「末摘花」の全文を掲載していることであろう。現在から見れば遺漏もあり、第五編、六編という余分なものを付け加えたりしているが、当時の状況下では貴重な資料であったと言わざるを得ない。
当然のことながら伏字は無いので、上海で印刷発行したNo.1を除く全冊発禁処分を受けている。No.2は出来上がった時点で押収され、新たなものも印刷屋のストライキで遅れに遅れたため、仮綴の別冊と言う形で本冊より先に頒布されているものがある。発行年月他の記戴がないため不明な点が多いが、新年度の挨拶を兼ねた会員通信「号外附録」が残っていることから、昭和三年一月早々の頒布と思われる。急いで作ったためか、収載されて入る第一篇の扉ではなく、本文からノンブルが振ってある等の混乱が見られるのはやむお得ない仕儀か。No.6は頒布前に全冊押収されているので現存するものは無い筈である。
カーマシャストラ(全六冊)+別冊一冊 |
判型 | 四六判、No.1のみ138mm×220mm |
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造本 | 本分二度刷、No.1のみ袋綴 |
編集 | サー・フレデリック・ジョンース |
発行 | 張 門慶 |
発行所 | ソサイテイ・ド・カーマシャストラ |
刊年 | 昭和二年十月三十日 〜 昭和三年四月五日 |
No.1 |
頁数 | 172頁 |
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刊年 | 1927年10月30日 |
通巻 | 第三巻第十號 |
目次 |
支那性的書物の解題と張競生氏一派の仕事に就いて |
酒井 潔 | 5 |
蚤十夜物語
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紅霓娘譯 | 21 |
上海魔境見物記 |
梅原北明 | 61 |
愛の魔術 |
酒井 潔 | 81 |
陰陽語雜叢
- 天じ人
- (一)四足
- (ニ)大物
- (三)ざこ寝
- (四)手桶番
- (五)提燈
- (六)五人組
- (七)後門
- (八)お客さん
- (九)居膳
- 身代わりの咄
- 謎のちかひ
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佐藤紅霞 | 99 |
哈哈笑寸話(一)
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清道士編 | 121 |
宰相夫人と道化役者 |
酒井 潔 | 133 |
(下巻)明治性的珍聞史(その一)
- よく見れア兄弟だ
- よくあるやつ
- 點檢
- 稲荷様覺えがあろう
- カテイトルの失敗
- 煩惱の父
- 馬鹿な寢惚け
- 馬陰
- チンチン斬リのこと
- 大睾丸
- 女房の損料三十錢也
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梅原北明編 | 153 |
編輯餘談 | 169 |
No.2別冊 |
頁数 | 59頁(本文のみ) |
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刊年 | 無刊記のため不詳。 本冊より先に頒布されている。 |
目次 |
萬古集
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弓削朝臣狩高K麿撰 | 1 |
「末摘花」に露はれた婢女觀
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大曲駒村 | 12 |
蚤十夜物語 |
紅霓娘譯 | 39 |
No.2 |
頁数 | 164頁 |
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刊年 | 昭和三年一月二十五日 |
通巻 | 第三巻第十ニ號第四巻第一號 |
口絵
「此事實を見よ!(戰爭を呪ふの巻)」と題する写真十図
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目次 |
『通俗如意君傳』解題 |
| 5 |
日本小咄集成(その一) |
| 31 |
續淺草裏譚
- 序曲
- 第一編 淺草女の變選(ママ)
- 第二章 奥山水茶屋の女
- (一)公園の池と水茶屋
- (ニ)お國とお豊
- (三)淺草の三人お仙
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石角春之助 | 60 |
えくせ・ほも
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| 91 |
猥褻風俗史(自中世至近代)
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エドアルド・フックス | 96 |
女陰崇拜考 |
| 116 |
世界珍書案内(一)
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| 116 |
No.3 |
頁数 | 176頁 |
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刊年 | 昭和三年二月二十五日 |
通巻 | 第四巻第三號 |
貼込口絵
小人島の戯れ
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目次 |
編輯前記 |
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クロディーヌ・ド・キュラムの調書 (常ニ雄犬ト性交セル獣姦罪ニ關スル) |
| 1 |
狂言痴語抄
- 『萎陰隱逸傳自叙』
- 『萎陰隱逸傳跋』
- 『艶本雪の窓自序』
- 『春情花朧夜』
- 『通不通堪鹿軍談』
- 『春情心の多氣』
- 「美玉名句 百人一首」序
- 『逸著門集』序
- 「姫美談語」
- 『清少納言、拾遺枕草子花街抄』
- 『美人角力』
- 『春さめ日記』
- 『阿奈遠加志』
- 『眞情春雨衣』
- 『春情妓談水揚張』
- 『痴狂題』(一名「袖と袖」又「黄菊白菊」)
- 『艶史 滿倉妃男形』
- 『逸題』(會本お笑い草?)
- (會本枕地氣志)
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| 10 |
サッド侯爵評傳
- 生活
- 著作
- 精神及び道徳上の水準と他の時代の方向との關係
- 沙特の病的の精神状態
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| 37 |
蚤十夜物語
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| 73 |
續淺草裏譚(ニ)
- 第一章(ママ) 揚弓場と射的場の女
- (一)揚弓場の矢取女
- (ニ)新聞雜誌縦覽場
- (三)矢場から射的場へ
- (四)二人の男を手玉にとった女
- (六)(ママ)親子で戀を競ふ大弓屋
- 第四章 淺草女藝人の内幕
- (一)淺草女藝人の變遷
- (ニ)淺草の女浪花節
- (三)淺草の娘義太夫
- (四)安來節の江戸輸入
- (五)安來節女の生活
- (六)安來節女のローマンス
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石角春之助 | 98 |
日本小咄集成(そのニ) |
| 132 |
狂蝶新語(巻之一) 一名 邪正一如
|
| 146 |
猥褻風俗史(自中世至近代)
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ヱドアルド・フックス | 164 |
No.4 |
頁数 | 218頁 |
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刊年 | 昭和三年三月五日 |
通巻 | 第四巻第四號 |
貼込折込口絵
淫齋白水畫(本文、狂言痴語抄中玉藻譚參照)
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編輯前記 |
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目次 |
貼込折込口絵
開談花の雲(本文、性的見世物考參照)
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性的見世物考
- 自序(一)
- 自序(ニ)
- 自序(三)
- 目次
- 第一章 序論
- 第一節 見世物の定義
- 第ニ節 見世物の本質及び其變態
- 第ニ章 本論
- 第一節 性的見世物の定義
- 第ニ節 變格性見世物
- 第三節 本格性的見世物
- 第三章 結論
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| 1 |
男根崇拜考(附、リンガムに關する一般的考察)
- 一、性の神格化
- ニ、リンガム『權力』のシムボルとなった由來
- 三、『開くもの』
- 四、宣誓の起源
- 五、リンガム崇拜
- 六、リンガム表現の種々相(其一)
- 七、睾丸の職能の原始的解釋
- 八、リンガム表現の種々相(其ニ)
- 九、リンガムに關する珍風習(其一)
- 一〇、三位一體
- 一一、リンガムに關する珍風習(其ニ)
- 一ニ、男性の三角形
- 一三、男女三角形の混同
- 一四、愛の神とバッカス神
- 一五、聖アントニーの誘惑
- 一六、二種の十字架(リンガムのシンボル)
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| 39 |
狂言痴語抄(其ニ)
- 「藐姑射秘言」
- 「閨の友月の白玉」
- 「畫圖玉藻譚」
- 「青樓夜花王」
- 「賀禰能奈留氣」
- 「末久良姉武古」
- 「假寢乃遊女物語」
- 「江戸名所二十八景」
- 「鳥襟十二双歌合序」
- 「文のはやし」
- 「逸題」柱に「ふみ」とあり
- 「木曾開道旅寐廼手枕」
- 「夫女快淫水好傳」
- 「色想畫婦美」
- 「春情美談千ぐさの花」
- 「風流玉の盃」
- 「浮世閨中膝磨毛」
- 「狂蝶新語」 一名「邪正一如」
- 「浪花家土産」
- 「論御」
- 「春窓秘辭」抄
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| 92 |
世界珍書案内(ニ)
- ミラボオ伯爵の「ヱロテカ・ビブリオン」その他
- 序
- 「ヱロティカ ビブリオン」
發行者の緒言
- 解説
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| 129 |
蚤十夜物語
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| 164 |
狂蝶新語(巻之三) 一名 邪正一如(目次は巻ノニ)
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| 146 |
續淺草裏譚(三)
- 第五章 淺草の歌劇女優
- 第六章 シキとパンタライ社
- (一)明治時代のシキ
- (ニ)明治初年の淺草の夜鷹
- (三)パンタライ社の出現
- 第七章 淺草藝妓の役者買ひ
- (一)明治時代の公園藝妓
- (ニ)馬の脚を買ふ公園藝妓
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石角春之助 | 195 |
No.5 |
頁数 | 184頁 |
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刊年 | 昭和三年四月五日 |
通巻 | 第四巻第五號 |
編輯前記 |
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口絵
末摘花遊戯本二図
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目次 |
百戰必勝 閨房大秘術
- 眞經編
- 演議論
- 五弃當知
- 五忌當知
- 神氣宣養
- 房内靈丹
- 〓中實鼎
- 男察四至
- 女審八到
- 玩弄消息
- 鼓舞心情
- 淬鋒養鋭
- 演戰練平
- 制勝妙術
- 鎖閉玄機
- 大樂編
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| 1 |
完撰 末摘花
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| 32 |
No.6 |
頁数 |
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刊年 | 全冊押収のため現存するものは無い |
通巻 |
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