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叢書「変態十二史」は文芸資料研究会から発行された本編十二冊、附録三冊の計十五冊からなる叢書ですが、その内『変態崇拝史』『変態交婚史』『変態序文集』の三冊が発禁処分を受けたとされています。『変態序文集』は製本前に禁止の処分を受けて未完、他の二冊は一部頒布されたようです。


変態崇拝史
変態崇拝史

変態崇拝史』は変態十二史文芸資料研究会発行)の第九巻で、著者は齋藤昌三です。大正十六年一月十五日発行となっており、第七回の配本です。雑誌『談奇党』第三号(洛成館、昭和六年十二月)の「最近軟派出版史」(志摩房之助)に「変態十二史を除く他の出版物は悉く無納本であったため」との記述がありますが、普通に出版届けを出して納本した結果発禁処分を受けたのであれば、流通するはずがありません。しかし、『変態崇拝史』は古書としてそこそこの数が見受けられ、一部頒布された、というような希少性は感じられません。右は『変態崇拝史』の配布案内ですが、大正十五年十二月六日付で「愈々此の十八日より發送に取りかゝります」とありますので、年内の頒布を目指していたと思われます。これは出版法で発行の三日前までに納本するという手順を守っておらず、かなりの数が頒布されたと想像されます。

変態崇拝史配布案内

変態交婚史
變態交婚史 配布案内
変態交婚史 配布案内
変態交婚史

変態交婚史』は変態十二史文芸資料研究会発行)の第十一巻で、第八回の配本です。著者は藤澤衛彦で、奥付には昭和二年二月二十日発行と記述されています。こちらは『変態崇拝史』とは異なり正真正銘の稀覯本ですが、実在しますので一部の頒布というのは正しいのでしょう。上は『変態交婚史』の配布案内というよりは製本出来の予告案内といった方が正しいかと思われます。日付の記載はありませんが、昭和二年の一月中には出来上がるであろうことを告知しています。 一方、雑誌『文芸市場』三巻三号(文芸市場社、昭和二年三月一日)「小生筆禍御禮廣告」(梅原北明)に読売新聞の記事として「私が風俗壊亂で去る六日檢擧され」云々とあるが検挙などされていない旨の記述があります。検挙されたかどうかはともかく、昭和二年二月六日に警察の手が入ったのであれば、告知日から丸五日ありますので、頒布数は現存している数から推定される数よりも多くても良さそうに思われます。ということは製本出来が遅れたことを示唆しているのではないでしょうか。発行部数が少なすぎたためか、『変態交婚史』は正式な変態十二史からは外れ、第十一巻は作者は同じ藤澤衛彦の『変態浴場史』となっています。

 

変態序文集
変態珍書序文集 刊行案内
変態珍書序文集 刊行案内

変態序文集』と言われているものの正式名称が『変態珍書序文集』であったことが上の刊行案内で分かります。「第十三回配本 變態十二史附録第一巻 『變態珍書序文集』 八月二十八日製本出來」とありますが、内容は「番外附録第一巻は『變態珍書序文集』を刊行することに決定しました。」とあり、著者の茅崎波夫とは斎藤昌三のペンネームであることを述べています。雑誌『談奇党』第三号「最近珍書手帖覺書」(談奇黨編輯部)によれば「序文集は製本前に禁止の命を受けて未完」ということで、変態十二史中にも存在しませんし、現物もおそらく存在しないでしょう。


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