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談奇黨

梅原北明を出発点として大正後期から昭和初期に掛けて出版合戦を展開した軟派書籍、雑誌の最後を飾った雑誌である。勿論、完全な地下出版のように終戦間際まで刊行され続けていたものもあるし、【匂へる園】のような雑誌が本誌廃刊後も刊行されてはいるが、本誌のように全八冊刊行の内七冊が発禁と言う派手さは最早無い。また、終巻号になった臨時版のみ判形が異なっているのも他の雑誌に類を見ない。

発禁を免れた第三号は「好色文學受難録」と題して当時の軟派出版にまつわる裏事情の記事や資料で誌面を埋めている。内幕暴露と言ってしまえばそれまでだが、今となっては貴重な研究資料であるし、読物としても面白い。唯一の疑問点は、『現代獵奇作家版元人名録』に花房四郎と中野正人の両人を載せていることである。この二人は名前は違えど同一人物である。中野の項に『彼の再起する日は果たしていつか？』とある所を見ると、その辺の事情を考慮してのことであろうか。

本誌が他の雑誌に見られない特徴の一つに、談奇党同人、談奇党調査部、談奇党編集部などの名目でかなりの数の記事を掲載していることである。談奇党同人には文芸市場社以来の北明の旧友中野正人、雑誌【稀漁】を刊行した大木黎二など錚々たる顔ぶれが揃っており、原稿を他の人に依頼しなくても誌面を埋められてしまった、と言うことであろうか。事情はどうあれ、最後の打ち上げ花火に相応しい陣容であるとは言える。

また、本誌で特徴的なことは、最終号に当たる「臨時版」のみ判型が異なることであろうか。他の雑誌と同様、当誌も菊判が標準のサイズであるが、「臨時版」は四六判である。頁数も三百ページ以上あり、秋春の増刊号の倍、通常号の四倍、と単行本並の厚さである。本誌の刊行案内に『雜誌　談奇黨のスローガン』の第一として、『毎月一冊づゝ拾貳回出たら自殺する』とあるように、初から長期に亘る発行を考えていなかった上に、発禁の連続で一年も持たないと思ったのか、最後の力を振り絞った力作ではあった。只、何故判型を変えたのかは、今持って謎のままである。

談奇黨（全八冊）
判型	菊判、臨時版のみ四六判
編集	鈴木辰雄
発行	鈴木辰雄
発行所	洛成館
刊年	昭和六年九月一日～昭和七年六月八日

創刊號
頁数	79頁
刊年	昭和六年九月一日

目次
口絵　ナイト倶樂部の假装舞踊（色刷）　漫画二図
世界ナイト倶樂部の研究	談奇董調査部	5
現代　艶道通鑑色道序論第一講　烈婦と淫婦の識別法	妙竹林齋	14
エロスの神々　性器崇拜とそのシムボル（一）～（五）	イー・ゴールド・スミス	21
談奇黨夜話（第一夜）第一話　快男兒美女を走らす第二話　揺れる寢臺	談奇黨同人	31
原稿募集		38囲
友色ぶり（一）　（陰間川柳考）	鳩々園主人	39
江戸　性的小咄雜考けぬき穴の評定附き所天狗太平の御代大根賣新開松茸相場	梓道人	43
罷睡録（一）茶目小僧の辣謔（ニ）空き俵を背負ふ（三）馬の秘術、夜警を驚殺す（四）馬鹿旦那猾奴の惡口	耽好洞人	46
愼色慾と不老長壽　談奇黨員へのメッセージ	談奇黨編輯局	49
圓宿ホテルの一夜	黑味獵子	55
ジャン・ベルネル夫人の狂樂　（一名愉快な寡婦の冒險）はしがき一～四	シャルロット芝　盛光譯	64
編輯局から		79

第二號
頁数	80頁
刊年	昭和六年十月一日

目次
口絵　粋な屏風（色刷）　談奇名勝（其一）　談奇名勝（其ニ）
狂歌の好色的考察	狂夢樓主人	5
便所樂書名所案内　（附・所樂書雜考）一、樂書の心理ニ、便所樂書の心理三、東京便所樂書巡禮	貞岡松治	12
藥學研究　精液が藥物となった話	破琴莊主人	25
友色ぶり（ニ）　（陰間川柳考）僧侶	鳩々園主人	33
江戸性愛笑話蒐筒もたせ利生の間違い似たもの杓子定木ムダ花占者立聞禁物かたこと喧嘩	戯笑亭主人	38
聖林のナイト倶樂部　映畫人の性生活１～４	談奇董調査部	41
談奇黨夜話消防手の日記或るエツフエミニスト書翰	談奇黨同人	47
神の戯れ	マツ・コオノス	53
性檢閲アメリカ通信	談奇黨編輯局	58
ふんどし綺談	久峻山人	60
倫敦の寡婦クラブ一～三	ヘンリー・クラウソン作山田　宗是譯	65
編輯室から		80

秋季増刊號
頁数	160頁
刊年	昭和六年十月二十五日

目次
口絵　浮世絵（色刷）　伏魔殿　ダンス・エロテイカ　淫婦のシムボル
交合條例　閨房秘書緒言第一條～第五十五條閨房秘書附記手淫害毒論	談奇董編輯部	3
現代　艶道通鑑　性科學と性的技巧第一章　性交の基本形態緒論指導書の必要と性交史基本的五種の△△法基本第一　正交法基本第二　鶏姦法基本第三　カニリングス基本第四　指弄法基本第五　素×法第二章　何故性交が必要であるか、性交と健康、　　　　性交と美感第三章　バス・コントロール批判洗條法引×法コンドム間休法海綿ペツサリー明礬水第四章　初夜權の心得結婚當夜に於ける男女の心理的考察結婚前の豫備知識	妙竹林齋	38
東京淫神邪佛考序説（生殖器崇拜狂一般）（一）淺草寺の觀音樣（ニ）久米の平内兵衛堂（三）不忍池の辧天樣（四）瘡守稲荷と笠森お仙（五）下谷の七裏大善神（六）淺草の聖天樣（七）千駄ヶ谷の「お　　こ榎」（八）吾嬬神社の眞羅稲荷	片田信雄	78
支那　性愛秘話集成主氣の説意外肚腸三凸の説雨に情有頑迷心？身？唯今一發尿器無用枕感謝半分宛隣も同然良家の娘あれ小便がお願ひ案外雲隱れ腹壁を破る我こそ半死道理で成る程醫者に従へ酒の代り我自ら殺し方	狂夢樓主人	103
太平禪寺物語	愚老庵譯述	112
江戸大奥秘話　龍田の憤死	江川蘭三郎	132
復讐の淫虐魔　或る死刑囚の懺悔録の一節一～四	フリイドリツヒ　・ユンケル作宮下　浩　譯	148
編輯局より		160

第三號
頁数	96頁
刊年	昭和六年十二月一日

目次
口絵　エロ本屋検挙の新聞切抜き　談奇作家見立番附　エログロ發禁書見立番附
珍書屋征伐珍書屋群像珍書屋戰術と取締戰術珍書屋のトリック	耽好同人	3
最近　軟派出版史序論文藝資料研究會のスタート文藝市場社と文藝資料研究會編輯部の對立群少エロ本屋の續出期	志摩房之助	19
ヱロ出版捕物綺談その一　お金ですみますことならそのニ　引千切られた十圓紙幣その三　重要書類の正體？その四　これは又怜悧な拘留御免その五　ものはとりようその六　鬼の眼にも涙その七　二足の草鞋をはいた虫その八　上には上・珍書屋をペテンにかけた女の話その八^ﾏﾏ　珍書屋ブローカーの話その九　逃げる・追ひかける話	談奇黨編輯部	32
最近　珍書手帖覺書外國之部文藝資料研究會編輯部發行文藝資料研究會發行文藝市場社發行談奇館書局發行南柯書院發行世界デカメロン全集書局梨甫發行文藝日本社文献堂書院日本文献書房東歐書院古今堂書院發行坂本書店世界珍籍全集刊行會國際文献刊行會附　軟文學雜誌覺	談奇黨編輯部	59
現代獵奇作家版元人名録伊藤竹醉伊藤晴雨池田文痴庵泉　芳璟今村螺炎　別名鞆羽塚隆成原　比露志（別名原浩三）花房四郎西谷　操大泉黑石大曲駒村大野　卓大木黎ニ（別名喜仲）尾崎久彌　別名封醉小史綿谷　雪　別名磨耶火綿貫六助河村目呂ニ上森健一郎竹内道之助高階喜久也（別名高見文雄）田中直樹中戸川薫明中野正人梅原北明（別名烏山朝太郎）山本定一益本重雄（別名蘇川山人）藤澤衛五小林隆之助神波勇藏青山倭文ニ（別名富山三郎）酒井　潔齋藤昌三（別名茅崎浪夫）佐藤紅霞峰岸義一宮本　良　別名松岡貞治、窪野四十一三浦武雄　別名藤田圭介、田中美智雄南　紅雨　別名梳弄堂山人篠崎兼三（別名紫野子綠）平井　通（別名耽好洞人）		71
編輯局だより		96

第四號
頁数	80頁
刊年	昭和七年一月二十日

目次
口絵　エロ・ダンス（色刷）　娼婦黴毒病院檢査の圖　誘惑を超ゆる者
近代檢黴考　詩歌俗謡に表はれた檢黴（一）～（三）	谷　新三	5
友色ぶり（三）　（陰間川柳考）後家武士町人藥品菊慈童	鳩々園主人	17
治療秘話　瘡	志摩速夫	25
研究資料　毛の性愛學	津田貞明	31
随筆　妙竹林集（その一）指の雜談	妙竹林齋	37
魔都新嘉坡の裏面子を産んだ處女國際ハウスの彼女達	談奇黨調査部	43
モンテカルロの佝僂男　性的變質不具者の生活記録１～４	モオリス　・ブルウジヱ作宮下　活^ﾏﾏ　譯	62
編輯後記		80

新春特輯號
頁数	175頁
刊年	昭和七年二月二十九日

目次
口絵　快獸　惡戯　踊れよ踊れ
研究資料　〓の底解題	談奇黨編輯部	5
屍姦者の心理サデイスムスイ．淫樂的兇殺ロ．屍姦者	羽太鋭治遺稿	34
談奇黨マンダン集プロロオグ僕の名まへ發明萬年紙發明　新ナイトキャップ發明　すゐとり紙應用岡村文子の間違い傳明　絹代國名モダンな話説明者はどうしたＭの話しハーバート・エム・マーラー氏氣の長いナンセンス彼の本體は？いゝところタンポ彼女の罪名ヶの字の嫌ひな男流石は職掌柄ダンゼン處女だわ温泉場の浴槽コンドームを入れておくりんの玉を落した水平埀直運動と顎箱枕と櫻紙弄術を教へられた話エピローグ	ＭＯＫ生	47
シヤワー・ルーム（一）から（三）	荻澤　寛	65
漫説　屎尿風景	左右目双平	80
談奇小説　踊る夢魔	タケシ・ハラ	91
世界を震撼せしめた巴里の青髯事件第一信第二信第三信	前佛蘭西高等法院判事ドラモンド　　・ラ・デイユ	116
特別附録　南歐好色文學名作集花嫁　　　　　　アントニオ・コルナツツアノ作法王羅馬入城　　マズツチオ作ラヴイネルラ　　スピオネ・バルガリイ作アリゴと靴脂　　作者不明	花房四郎	141
編輯後記		175

第五號
頁数	96頁
刊年	昭和七年三月

目次
口絵（タイトルが無いので適当に付けました：館主）　護符　りんご取り　早とちり　首無し事件犯人の縊死体發見さる
『りんの玉』雜考一、異名二、形状三、歴史四、用法五、効能六、目的七、文學に現はれた「りんの玉」八、參考書	琳珠齊	5
鮑とり雜話１～６	平井蒼太	16
訓蒙性的戯談同情心の發露慈悲僧の功徳袂別女はお祝儀だけ變形異常〇〇の話（その一）同じく（その二）	對江堂巫山	29
談奇黨夜話（その三）奇怪なハマの鏡部屋	談奇黨同人	39
南欧　黄表紙綺譚序論眞珠裁判マグニフイカツト法師の無花果兩手に花	談奇黨編輯部譯	44
昭和情痴秘聞　陰獸倉吉物語	破琴莊主人	57
猶太人の女と基督教徒	ピエトロ・フオルチニ作花　　房　　四　　郎譯	79
編輯室から		96

臨時版
頁数	324頁
刊年	昭和七年六月八日

目次
口絵　胸の魅力（原色）　鎌倉時代の遺物　ムーラン・ルージュの女のグロ趣味　魔石と呼ばれてゐる奇石　姦夫の征伐
強姦檢察法強姦の總論醫術上の證跡兒女の強姦の場合強姦の痕跡陰道より膿液の流出する場合少女の強姦を論ず處女の強姦を論ず嫁婦の強姦を論ず強姦の成否強姦證跡の消失強姦と妊娠顯微鏡檢査の證跡精液の汚點婦體より得る顯微鏡檢視の證跡血痕の檢視法死體強姦の證跡國法上の關係婦女が男子を犯す場合鶏姦論	アルフレット・タイロル原著談奇黨編輯部訳述	5
現代　色道禁秘論序論風俗改正實現期成同盟の事業同盟調査部員の活躍禁色道我觀性愛問題相談所風俗改正の具體的提案　エロチクリンの發明愛妻問答性教育の批判と性愛技巧問題	妙竹林齋	59
動物性話　海の戀物語タコの性的生活ニシンの亂交鱒の性愛生活アザラシのロマンス暴君トゲウヲのエロの殿堂	花房四郎	129
本朝艶本解説一、英泉「艶本美女競」	新守庄二	149
談奇風景ダンス・デュ・ヴアントル秘戯壁畫性的見世物の諸流親子鑑定法それ吹けやれ吹け蜜月考言語の異同	黑田英介	161
西洋談奇秘話　二人の破戒僧女犯破戒僧を殺した話托鉢僧	談奇黨編輯部譯	173
東海道中　色行脚	十返舎十九	191
享保遺聞　豊州公亂行記【１】～【３】	佐賀春之介	215
特別附録　研究資料　性愛論讀む人への注意序説の序辭第一章　序説第ニ章　公表の理由第參章　正しい精神的態度第四章　性的器官（生殖器官）第五章　性的器官の作用第六章　性交第七章　初交第八章　性愛の技巧第九章　含蓄的性交第拾章　清潔第拾壱章　結論	エツチ・ダブリュウ　・ロング博士原著談奇黨編輯部譯	243
談奇黨遺言書		324

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