閑話究題 XX文学の館 雑誌資料
新生
雑誌【生活文化】、【造化】が弾圧により相次いで潰れた後、最後の意地で刊行したのが【新生】である。しかし、先の二誌で力は尽きたと見え、現物を手に取って見ると、意気込みとは別に痛々しさのみが強調されてしまう。判型は各号毎にバラバラで、ガリ切りの稚拙さたるや目を覆うばかりである。実際見ていて目が痛くなる。また、3号と5号は活字であるが、雑誌の特集と言うよりは、諸般の事情により単行本に出来なかったものをそのまま使用したものであろう、と言うのが今日の定説である。取り立てて目を引くような記事はなく、先の活字で刊行された「おいらん」が目玉であろうか。【造化】からの連載の続きに『いつわりの橋(労働者の性典)』があるが、本誌も廃刊になってしまったため未刊のままである。【造化】に引き続き、川崎清一が発行兼編集を行っているが、【あまとりあ】発刊から【生活文化】の発行まで一気に駆け上ったこの種の雑誌の落日の様子は誰の目にも明らかとなってしまった。
尚、本誌には奥付が無く、正確な刊行時期が判らないが、主に近世庶民文化研究所の会報「瓦版」に掲載されていた『出版界片々』を参考に類推した。従って、時期が多少前後している可能性はある。また、従来本誌は昭和三十年中に終刊されていると言うのが定説であったが、昭和三十一年三月頃頒布された近世庶民文化研究所の「特別会員へ」と題する一枚刷りのガリ版に『新生社の「新生」(5)(「おいらん」中巻)は本文が二月末には刷れているのに、表紙を印刷所に入れることが出来なくてまだ未刊である。』
とある所から、第五号は遅くとも四月、おそらくは三月の刊行であることが推測できる。
新生(全五冊) |
判型 | 菊判、A5判、B6判 |
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編集 | 川崎清一 |
発行 | 川崎清一 |
発行所 | 新生活研究会 |
刊年 | 昭和三十年六月(?)〜昭和三十一年三月(?) |
創刊号 |
判型 | 菊判 孔版 |
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頁数 | 64頁 |
刊年 | 昭和三十年六月(?) |
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目次 |
新生の辞 |
目次 | 表紙裏 |
口絵:一葉二図(陰門見八化異之圖) |
新生の辞 | 川崎清一 | 1 |
オーガズムと性交態位論
- 女性のオーガズム
- 膣オーガズムとクリトリス・オーガズム
- 性的オーガズムの原因
- 射精とオーガズム
- ペニスとクリトリスの接触の重要性
- 適正な諸態位
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ロムバード・ケリー 大場正史 訳 | 2 |
「子たね蒔」より |
| 9下囲 |
徳川性文献に現れた背交位諸態
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橋 鐵 | 10 |
松やに |
花咲一男氏著書より | 14下囲 |
川柳態位考
- 1
- 2
- 3
- A ほんまどり
- B 茶臼どり
- C うしろどり
- D 立ちどり
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岡田 甫 | 16 |
性交態位の醫学的考察 |
宇佐美正夫 | 22 |
噛みつく女 |
坂ノ上言夫 | 28 |
輪姦記 |
−F− | 33 |
会員体験報告 殘像 |
木下桓夫 | 34 |
快鳴考 |
阿南岳史 | 46 |
騒声?音譜(その1) |
夢洞山人 | 50下囲 |
騒声?音譜(その2) |
夢洞山人 | 52 |
香閨祕記
- 序
- 第一回 芳陥を踏みて才子香肌を窺ひ
羅幃に入りて佳人玉梓を試む
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甚眉軒主人 編 | 53 |
編集後記 | 裏表紙 |
2号 |
判型 | 菊判 孔版 |
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頁数 | 64頁 |
刊年 | 昭和三十年八月(?) |
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巻頭言 | 川崎清一 | 1上 |
目次 |
| 1下 |
態位より見たる性交運動について |
宇佐美正夫 | 2 |
いかにして結婚の性生活を幸福に導くか −アメリカのベストセラー ソートン夫妻共著「性書」の紹介− |
平野威馬雄 | 7 |
コント 早打ちに致せの話 |
| 17 |
女難華
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忍川柳三 | 18 |
艶道の態位
- をんな
容色を見て婦の心を知る
- 娘に言寄初恋の意
- 嫁痛みの主法
- 契情に情けを洩らさせる交接
- 女に惚られる伝
- 淫乱女交合法 続取の法
- 夫婦交合礼
- ちょんのま
一寸交合の心得
- 老人の交合
- 芸者をいろにする伝
- かたい まよ
金石婦を惚迷はせる伝
- 好物家の婦の相をしる事
- めいほう
勢をます名方
- 孕まざる極秘伝
- 婦人の嫉妬をさる伝
- 交合精をもらすに度数ある事
- ほれ
恍惚薬大妙方 追加
|
岡田 甫 | 33 |
皇后の性典「衛生秘要抄」の研究
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伏見冲敬 | 41 |
残像 |
木下桓夫 | 49 |
お茶碗の肌 回想の幼年期 |
牡丹夢八(目次は耽八) | 58 |
コント 武士は後に退かぬ話 |
| 64 |
3号 |
判型 | B6判 活字 |
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頁数 | 90頁 |
刊年 | 昭和三十年十一月(?) |
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おいらん特輯号 初編 |
おいらん | 逸名氏 原著 青山繁 補綴 | 1 |
序に代えて | 著者識 | 3 |
解題 | 青山 繁 | 5 |
悪友 | 7 |
鍔合戰 | 27 |
第四号室 | 55 |
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3号扉 |
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4号(目次には第三号とある) |
判型 | A5判 孔版 |
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頁数 | 66頁 |
刊年 | 昭和三十年十一月(?) |
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巻頭言 | 會長 | 1 |
目次 |
| 1下 |
性の祭典 |
坂ノ上言夫 | 2 |
婦人の色は称するに足らず |
| 8下囲 |
いかにして結婚の性生活を幸福に導くか(2) − ソートン夫妻共著「性書」の紹介− |
平野威馬雄 | 7 |
会員報告 泉平の話
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植松陽一 | 19 |
いつわりの橋(労働者の性典) |
角田庄次 | 32 |
お茶碗の肌(二) 回想の幼年期 |
牡丹耽八 | 44 |
愛の饗宴
- 一、極悪貴族グランウエル、
美女ヘンリエットに魅せられて 奸計をめぐらすこと
- 二、好色漢グランウエル、
ヘンリエット嬢の蕾を愛撫すること
- 三、ヘンリット(ママ)嬢、
またもやグランウエルに嬲られること
- 四、卿の大メスが、ほんもののメスに負けたこと
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原作 マルキ・ド・サド 訳 美影夢里 | 50 |
香閨祕記(2)
- 第一回(承前)
- 第二回 嬌媚を献じて雪肉を燈光に照らし
- 風騒を弄びて朱唇に簫管を品す
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甚眉軒主人 編 | 60 |
5号 |
判型 | B6判 活字 |
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頁数 | 87頁(3号からの追い丁) |
刊年 | 昭和三十一年三月(?) |
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おいらん特輯号 中編 |
続おいらん | 逸名氏 原著 青山繁 補綴 |
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遊女の貞操 | 91 |
川崎の夜 | 129 |
十円紙幣の価値 | 145 |
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5号扉 |
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