閑話究題　XX文学の館　雑誌資料

猟奇資料

洛成館が雑誌【談奇党】の後続誌として企画し、【アヴァンチュール】という誌名で案内が出たのが最初である。その後、読者の希望が多いという理由で、【猟奇資料】と改称する旨の案内を送付、昭和七年九月初旬の予定が、十月の下旬になって漸く刊行された。 昭和七年も末になると、本格的なこの種の雑誌の刊行はもう無く、かろうじて【匂へる園】（風俗資料刊行会、昭和七年七月 〜 昭和八年一月）が残っている程度である。本誌も創刊号一冊を刊行したのみで後が続かなかった。

他の雑誌に比べて特に突出した記事ははないが、興味深いのは、洛成館編輯局名の記事『出版講座』であろうか。内容の大半を占めるのは『現行出版法』と題した、当時の出版法をめぐる刊行者の立場を述べたものである。出版法の第一条から各条文を揚げ、現状とそれに対する軟派出版刊行者としての心得などのコメントを述べている。下手な法律論を聞くよりも、実践が絡んでいるだけに数段面白い。【談奇党】第三号「好色文学受難録」もそうであるが、当時の軟派出版界の裏が垣間見える洛成館の記事は、資料という点からも有り難い。

猟奇資料（全一冊）
判型	菊判
頁数	192頁
編集	志茂村進
発行	志茂村進
発行所	洛成��
刊年	昭和七年十月廿五日