閑話究題 XX文学の館 雑誌資料
稀漁
発行された四冊総てが発禁処分を受けている。当時と言えども、全冊発禁という雑誌は珍しい。そのためか、編集者(発行者と印刷人も兼ねている)は毎回異なり、判型も何故か正方形に近い得意な形態の雑誌である。元々この雑誌は【獵奇】として世に出るはずであったのが、ゴタゴタの末「獵奇」をひっくり返して「奇獵」、文字を替えて「稀漁」とし、漸く発刊された経緯がある。
第一号の発行兼編集を行っている大木黎ニは、「袖と袖」や「乱れ雲」などの完全本を刊行するなど地下出版の本道を歩いている。従って、伏字など無くても良さそうなものだが一応はある。伏字表も存在する。しかし、第三号の編集後記で『それから正誤表なんていふけち臭いものはやめました。〇〇にした所で、どうせ明徹な頭脳と、どんなことでも洞察する烱眼の所有者であらせられるお役人様には、直ぐに看破されてイタイ目といふことになるからです。』
とあるように、この号に伏字は無い。が、第四号では何故か復活している。そしてその号で終刊である。
尚、「大正昭和艶本資料の探求」(斉藤夜居、芳賀書店、昭和四十四年一月)の本誌に関する解説で『各号に正誤表実は伏字表を挿入しているが、第四冊には未納だった。』
としているが、所蔵本の第四号には伏字表が貼込まれているので、後で別送したものであろうか?
稀漁(全四冊) |
判型 | 207×185 |
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編集兼発行 | 大木黎ニ など各号毎に異なる |
発行所 | 巫山房 |
刊年 | 昭和四年五月十八日 〜 昭和四年十一月十五日 |
第一号 |
頁数 | 78頁 |
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第一号表紙 |
第一号目次 |
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編集兼発行 | 大木黎ニ |
刊年 | 昭和四年五月十八日 |
目次 |
口繪 |
目次 | 1 |
性愛秘義解説(一)
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巫山亭主人夢輔 | 2 |
末摘花分類 江戸期の性情(一)
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笠松武夫 | 7 |
ニ葉柳 | 23囲 |
アイヌのメノコの色話 |
今 酋長 | 24 |
ニ葉柳 | 28囲 |
桃色雜話
- 海老の鬼がらやき
- 漬物
- 佳境?
- 三越の恥毛
- 一番列車
- 電流
- 都々伊津集
- 角力甚句
- 田の中で替歌
- 地方俗謡二ツ三ツ
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瀧口紅雨 | 29 |
世界性的小咄 第一篇 魯西亜
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蛭田近ニ | 32 |
ニ葉柳 | 46囲 |
色慾是空
- おことわり
- 男の財布
- 黒色と〇〇高
- 氣の行くといふ事
- キッスについて
- お半長右衛門
- きたない女!
- 雜魚寢に通がつたお客
- 尻振り踊
- 攻め道具の事
- 春畫と云ふものは
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門御三郎 | 47 |
近世 W・C文藝
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妙高山人 | 54 |
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54下段 |
海底クラブとビリヤード |
水町春夫 | 58 |
東西艶書解題(その一)
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大辻春人 | 66 |
編輯の後 | 78 |
第ニ號 |
頁数 | 七十三頁 |
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第ニ号表紙 |
第ニ号正誤表 |
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編集兼発行 | 斎藤虚巳 |
刊年 | 昭和四年六月十六日 |
目次 |
口繪 | 花影隔簾録の挿絵 |
目次 | 1 |
性愛秘義解説(ニ)
- 中古篇 波羅門經
- 一、接吻
- ニ、抱擁
- 三、印度各地に於ける婦人の性慾趣味
- 四、性(ママ)殖器の大差に依れる男女の分類
- 五、好色ならしむる交接の樣式
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巫山亭主人夢輔 | 2 |
官女の吾妻くだり | 8囲 |
江戸時代淫藥廣告抄
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珍々亭淫山 | 9 |
末摘花分類 江戸期の性情(ニ)
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笠松武夫 | 20 |
レビュー 高速度商賣 早とり肉影寫眞 |
河村目呂ニ想案 | 32 |
日の丸敗北物語 |
耽奇荘主人 | 34 |
錢湯性的雑話
- 私は湯屋の三助である
- オナニズム
- 放尿
- 恥毛
- 覗く奴
- 番臺に坐って
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裸漁仙人 | 36 |
桃色雜話
- それも一緒に
- 一に
- 痛いはづだよ
- 夕涼み
- 鏡〔實話〕
- 人間が日の目を見なかったら
- 殿方よりも
- 特等席
- 腫物がつぶれた
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瀧口紅雨 | 40 |
稀漁洞窟 | 44 |
旅烏情濡場 |
大辻春人 | 46 |
夢想の馬藥 | 49囲 |
近世 W・C文藝
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蛭田近二 | 50 |
女難華(特別讀物) |
吉原亂歩 | 53 |
東西艶書解題(そのニ)
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吐水散人 | 65 |
編輯の後 | 72 |
第三號 |
頁数 | 86頁 |
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編集兼発行 | 大木喜仲 |
刊年 | 昭和四年八月五日 |
目次 |
口繪(とあるが、実際は何も無し) |
目次 | 1 |
性愛秘義解説(三)
- 中古篇 波羅門經
- 六、性慾のみを目的とする交接の樣式
- 七、交接時に於ける男性の義務並びに女性の滿足
- 備考
- 八、女が男性のスパズムを早からしむる樣式
- 備考
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巫山亭主人夢輔 | 2 |
古今情調鑑
- 交合の大意
- 傳授
- 秘傳
- 一、閨中に女を啼かす法
- ニ、閨中に啼かぬ女を啼かす法
- 三、一義の交合を女に知らす法
- 三、(ママ)犯しても孕まぬ法
- 五、二番續きの法
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南喃亭主人 | 9 |
珍々亭 猥文雜爼
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珍々亭淫山 | 18 |
末摘花分類 江戸期の性情(三)
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笠松武夫 | 22 |
月やく |
川村目呂ニ | 32 |
三十六佳撰漫考
- 穴邊赤人(一)
- 常住淫汁(二)
- 古穴中門(三)
- 振陰同士行(四)
- 上男根姉好(五)
- 拭陰莖氣益(六)
- まんぢぅ陰戸執肌(七)
- 吹儘戀風(八)
- 遺精(九)
- 皆開仕度思(十)
- 皆入生飽倦(十一)
- 逢掻開惚元(十二)
- 雁陰莖形平(十三)
- 酒上生乘(十四)
- 大莖金勢(十五)
- 彼方此方別寢(十六)
- 氣有ノ元好(十七)
- 逢中色好開(十八)
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葛木胡蝶 | 42 |
我樂多文庫
- 去勢學の応用
- セックスの研究
- 姦通の因
- 性慾が美を誤る例
- セジク代の誇大妄想
- 配偶の撰擇は虚僞
- 無病を自ら計る方法
- 女の戀と男の戀
- 神『ゴッド』
- 妖鬼怪物
- 釋迦
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青山倭文ニ | 42 |
勘定 |
耽奇亭主人 | 34 |
カフェー素描
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花陰山人 | 51 |
稀漁洞窟 | 44 |
雪國猥談
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猥談亭主人 | 48 |
閨の御慎みのこと |
尾高佳人 | 66 |
芳町でする水揚げのえらひどさ | 68囲 |
男の弱點 |
英智生 | 69 |
ストーブ夜話(特別讀物) |
山浦日露志 | 71 |
東西艶書解題(其三)
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好洞稀人 | 79 |
編輯の後 | 85 |
第四號 |
頁数 | 78頁 |
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編集兼発行 | 佐藤勇次郎 |
刊年 | 昭和四年十一月十五日 |
目次 |
口繪(とあるが、実際は何も無し) |
目次 | 1 |
子多寝まき(本文は『こたねまき』) |
巫山亭主人夢輔 | 2 |
東西情痴書簡集 |
好稀生 | 6 |
性愛奥傳 素女經
- 交合秘術八深九淺とは
- 『美しい娘の寳と大金をうまく取上げた話』
- 『精液長時間保留の秘藥』
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花洞仙人 | 16 |
淫夢
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川南未三夫 | 25 |
古今情調鑑(承前)
- 秘傳
- 六、年増女を腰抜けにする法
- 七、遊女に氣をやらす法
- 八、傾城に氣をいかす法
- 九、藝者を啼かす法
- 十、荒淫の女を懲りさす法
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南喃亭主人 | 31 |
こたん道具並使用法
- 一、 張形
- ニ、 くぢり
- 三、 互形
- 四、 甲形
- 五、 よろひがた
- 六、 ひめなきわ
- 七、 ひごずいき
- 八、 りんの輪
- 九、 なまこの輪
- 十、 りんの玉
- 十一、たすけ舟
- 十二、まくわ瓜、こんにゃく、あづま形
- 十三、せきれい臺
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無冬山人 | 41 |
稀漁洞窟 | 46 |
短夜風景 |
澄川たかし | 50 |
桃栗三年 |
川南三郎 | 54 |
道化芝居 |
久峻山人 | 59 |
掌上愛壷
- 物干臺
- 舟遊び
- 路上
- 鯉の滝のぼり
- ズロース
- 車庫
- 見てはいやよ
- 猫
- 名刺(原稿)
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花陰山人 | 64 |
春情 櫻野物語 |
花洞盗人 | 69 |
東西艶書解題(其四)
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登月醉人 | 73 |
編輯後記 | 78 |